不動産担保ローン 一戸建て アスシェリで微妙な19のお題「6.たくさんの好きと、たくさんの愛を、きみに」



「あ」
「っ、シェリア、どうかしたのか!?」
 軽い運動も必要だ、と自分が付き添う時ならと初期に折り合いを付け、数ヶ月前から天気の良い日の日課となっている散歩の最中、ふと声を漏らして足を止めた妻に気付き、手を取って隣を歩いていたアスベルが焦燥も顕わに彼女の顔を覗き込む。
 その表情を見て、シェリアは思わず吹き出した。
「アスベルったら、そんなに慌てなくて良いのに」
「そんなこと言われても、俺には分からないことなんだぞ」
「それはそうよ。それにしたって慌て過ぎ。適度な運動は欠かしてないし、食事だって気をつけてて、これ以上無いくらい順調なんだから」
 言って、丸く張り出した腹部を撫でて笑ったシェリア。
 日を増すごとに大きくなっていった腹部は今は大分重そうに見える。だからこそ余計にアスベルの心配は尽きないのだ。
「それで、どうしたんだ?」
「赤ちゃんがお腹を蹴ったの。……あ、また」
 元気な証拠ね、と微笑みながら腹部を撫でる彼女に、夫はどこか不貞腐れたような表情を浮かべる。
「シェリアが大変なのは分かるんだけど、こういう時はやっぱりズルいって思うな。男は生まれてくるまで心配の方が大きいし」
「ふふ。それもあともう少しよ、きっと。アスベルも触れてみて? きっと答えてくれるから。誰かさんに似たのか、とってもやんちゃみたい」
「それは俺だけじゃなくてシェリアも、だろ? 体は弱くっても、お転婆だったんだし」
 黙って行こうとしても見つけ出して、着いて行くと言ってきかなかった小さな女の子。
 体が弱いことを知っていて、苦しませたくないという思い。邪険にすることはあったけれど、嫌だと思ったことなんて無かった。
 子供ながらに、シェリアとはずっと一緒に居るのだろうと、そう思っていたのだ。
 そして二人の関係がただの幼馴染から夫婦に変わった今、その予感は見事に的中している。
「お転婆は余計よ」
 む、と頬を膨らませて軽く夫を睨んだ彼女は、直後に目を見開いて笑いだした。
「この子もそうだ、って言ってるわよ、お父さん」
「やっぱりズルいよな……。仕方ないから負けておくけど」
「ふふ。それにしても元気だわ……。生まれてみるまで分からないけど、男の子っぽいわね」
「男だよ、絶対」
 きっぱりと言い切ったアスベルに、シェリアは瞳を瞬いて小首を傾げる。
「意外だわ。アスベルなら、女の子が良いって言うかと思ったのに」
「そりゃ、いずれ女の子も欲しいけどさ」
「えぇっ!?」
「……そんなに驚くことか?」
「だ、だ、だって……」
 頬を赤く染めてもごもごと口ごもる妻の様子に、青年は小さく笑って言った。
「取りあえず家族計画は今夜にでもゆっくり話すとして」
「ア、アスベルっ!!」
「この子が男の子だ、って思うのは。分かるから」
「え……?」
 まあるく張り出したシェリアの腹部に手を当て、ゆるりと撫でるアスベル。
「俺の中には、半分の力しか残って無いんだ」
「アスベルの中に……、って、もしかして!」
「うん。きっと」
「そ、っか……」
 頷いて、見上げた夫の二色の瞳を見つめて再び頷くシェリア。
 アスベルの中にラムダが混じったその証となった、昼と夜、あるいは夜と朝の狭間の色を得た左眼。
 意識して無かったが、言われて見れば確かに今は青が少し強い色となっている。
「ねぇ、アスベル。いっぱい抱き締めてあげようね」
「ああ。そして世界中を一緒に回ろう。確かに此処が生きる世界なんだ、って」
 それから、と二人は顔を見合わせて当然のことを思い、ふわりと微笑した。
「早く出て来て、『お父さん』にしてくれよ」
「あら、私はもう少し一緒のままでもいいわ。だってアスベルが毎朝お散歩に付き合ってくれるんだもの」
「……生まれた後も、付き合うから」
「本当に?」
「ああ。会いたいのも本当だけど、いい加減にシェリアが足りないから、やっぱり早く産まれて欲しい」
 そう言って、意味深に彼女の耳を指先で掠めたアスベルに、シェリアは頬を淡く染めて夫を睨んだ。



たくさんの好きと、
たくさんの愛を、きみに
溢れても溢れても、ずっとずっと、当たり前に。
アスシェリで微妙な19のお題、六つ目はED数年後で結婚後のお話。EDロールのお子様と、友情の樹に刻まれた名前についての私的解釈。これが私の中のED後ということで。この題を見た時、このお話がぱっと浮かんだのでした。しかし出せるまでに凄く時間が掛かった……。
[脱稿:10'5.25 掲載:10'7.16]


お題:微妙な19のお題

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