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11.酔い

【ED1年後/夜の食堂兼酒場にて/ユーリ&エステル&仲間達/掌編】

「ユーリ」
 にっこりと、それはそれは輝かんばかりの笑顔を浮かべて己の名を呼んだ少女は、彼が何を返す前にその首に腕を回して抱きついて来た。
 困ったのは当の本人でも、抱きつかれた青年でもなく、周囲に居た仲間達だ。ただそれもほんの僅かで、すぐにそれぞれの性格がにじみ出た態度に変化する。最初は呆気にとられたものの顔を赤くして視線を逸らす少年や、声を掛けて離れさせようとする少女、微笑みを崩さぬまま杯を進めている女性、にやにやと笑う中年の男、と。
 さてどうしてやろうか、と青年は抱きつく少女が崩れ落ちぬように片腕を腰に回してやりながら、もう片方の手に持ったままだった杯を傾ける。アルコールが喉を通り抜けて行く感覚をひとしきり味わった後、見下ろした少女は猫のように懐いている。
 肩口に頭をもたれさせ、頬を摺り寄せて、いっそリタの持つバイト時の衣装の猫耳をつけてやりたいくらいの様子だ。
「エステル、もう休め」
「なんでです? わたしまだ、ユーリと一緒に居たいです」
 こてん、と首を傾げてユーリを見上げたエステルは、上目遣い(とは言え、身長差から必然的にそうなるのだが)でそう告げて更に擦り寄って、吐息を一つ漏らす。
 酒が入っているからなのだろう、熱い吐息がふわりと青年の首筋に掛かり、それがある場面を思い起こさせる。彼は不意に起こった衝動を押さえ込む為に口元を引き結んだ。
「エステル」
「いや、です」
 まだ一緒に居たい、再びそう告げた少女に、青年は持っていた杯を置き――抱きつくままのエステルを抱えて立ち上がった。いわゆるお子様抱っこ的な状況で持ち上げられた彼女は、何が起こったのかと不思議そうに瞳を瞬いている。
「カロル、明日はこの街に留まるってことで良かったんだよな?」
「え、あ、うん。物資の補給とか、情報収集とかあるし」
「オレ達は午後手伝うから、そのつもりで居て。朝は構わなくていいから」
 言外に、二人起きて来なくてもほっとけという言い分に、戸惑うカロルに代わってジュディスが微笑のまま頷いた。
「朝食も良いのね?」
「ああ。んじゃ、行くわ」
「青年、ジュディスちゃんとリタっちの部屋代、何とかしてよ?」
「今日の飲み代でいいだろ。明日渡す」
「リタ、おやすみなさい~」
「あー、もう、明日覚えときなさいよ!」
 こうなっては止められないのだから、と悔しそうに声を上げた少女に、それはそれは楽しげに目を眇めたユーリ。
「明日の午後なら、いつでも?」
 そう言い置いてエステルを抱えたまま食堂兼酒場を出て行ったユーリ。その後姿を見送っていた一堂は、とりあえず今度の機会にはあの少女が飲み過ぎないよう目を離さないでおこう、とそれぞれに思うのだった。



*とある街の食堂兼酒場でのユリエスと仲間達。

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