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34.NO TITLE

【本編中/第三部終盤/微ユリエス/掌編】


 戦力強化の為にバウルの運ぶフィエルティア号に乗って世界を飛び回る一行。しかし時にはバウルでさえ進むのが困難な気候に見舞われることがある。
 昨日、ヘリオードの宿でゆっくりと休んだ一行は朝からの激しい雷雨と、エアルの流れからある程度の天候も予想出来るリタの「一日続くんじゃない」という見立てから、出発を見合わせることとなった。
 ひとまず朝食を取り、それからは丁度良い機会だからと各々の荷物を整理し、フィエルティアの倉庫にある物資と照らし合わせ、必要の無い武器防具の処分や素材の合成を行うことにした。クジでそれらを行うことになった四人は、昼食後から荷物を手に一階のロビーにある幸福の市場の店に行っている。
 役目を免れたユーリは部屋で装備の手入れに専念し、それからしばらく後、その全てを終えた彼は首を回しながら部屋を出た。
「エステルだけ?」
「あ、ユーリ」
 中央に居間のようなスペースがあり、その両端に一つずつ寝室となる部屋がある続き部屋。ある程度旅の資金に余裕が出来ると、ヘリオードに滞在する際にはこの部屋を押さえているからか、フロントの人間も空いていればいつもの部屋で良いかと尋ねてくる。
 その部屋の備え付けのテーブルで何かを書いていたエステルは、紙面から顔を上げて掛けていた眼鏡を取ると、微笑しながら彼の問いに答えた。
「皆が出て行ってから戻ってきていませんから」
「ジュディが此処の合成屋を気に入ってたし、何かやってんのかね」
 言いつつテーブルに歩み寄った青年は、少女が手帳を閉じたことに気付いて片眉を上げる。
「邪魔した?」
「いいえ。丁度切りの良い所でしたから」
「日記かなんかか、それ」
「そのようなものでもあります。旅が終わった後、いずれ物語を書くために、旅の始まりから思い出しながら書き留めているものですから」
 ハルルで童話作家になることを決意したその後に手に入れた手帳とペン。就寝前のひと時や、こうした休養日に少しずつ書いていたのだとエステルは語った。
「そんじゃ、まだ題名が付いてない話なわけか」
「はい。一ページ目はだから、白紙のままなんです」
 ほら、と手帳の表紙を開いて見せた彼女の言う通り、確かに一ページ目は白紙のままとなっている。
「いつか物語として完成して、題名が付いたら、知らせろよ」
「はい、勿論です。だってこれは、わたし達の旅のお話なんですから」
 にこりと笑みを浮かべて頷いた少女に、青年は口角を上げ、彼女の手元にある手帳へと視線を落とした。
 今はまだ、旅の断片が書き留められ、題名の無い物語が記されていくその手帳の白紙のページに題名が記される時を思い浮かべながら。


*そして後に「Tales of Vesperia」と決まるのです、はい。

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