※これは「endless world」「closed world」の設定を引き継いでいる話であり、「その時」の始祖の隷長達の視点の番外的掌編です。ユーリとエステルは登場しませんが、描写で彼らの死について触れておりますので、苦手な方は窓を閉じてください。
「……またも繰り返すか」
コゴール砂漠の巣で赤き羽を持つ始祖の隷長は呟いた。何度目であろうか、この世界を「繰り返す」のは。彼だけではない、彼を盟主とする同士もまた、今同じことを思っているのであろう。
彼らが覚えているのはその種族たる特性故のことなのだろう。
いつからか、この時に彼らは思い出すようになった。繰り返す世界のことを、繰り返すこの時のことを。
この地から遠い、イリキア大陸を中心として高まるエアルを感じる。しかしもはや、始祖の隷長でさえどうにもすることは出来ない。
否、敢えて「何もしない」のだ。
「……愚かなのは、我等かもしれぬ」
閉じた世界、繰り返す永遠の時、エアルを取り込む特性故に「思い出す」ことが出来るのに「何もしない」始祖の隷長。
毒と謗りながら、その毒により壊れないこの世界――テルカ・リュミレース。
この世界を生かす為であるのならば。
「壊れぬのならば」
先に逝った闘技場の主は「これ」を知ったならば何と言うであろうか。
いつも思うのだ、この時に、彼の者の偽りなき率直な意見を聞いてみたい、と。
何度も何度も、世界が繰り返すその度に、何度も。
「ああ、またも……なのですね」
「クローム?」
背に乗り、帝都を見ていた銀髪の男は、どこか悲哀の込められたその呟きに訝しげに彼女を呼んだ。
「エアルが渦巻く。……世界の源たる力が満ち満ちる」
「何を……」
「あなたは、ヒトですから。仕方がありません。これは、恐らく私達の背負うべき『業』なのです」
この答えも何度返したのだろう。
もはや彼女でさえ、その記憶の彼方。
ここで、もしくは違う場所で、けれど必ず「終わり」を迎え、「繰り返す」世界。
「クローム、あなたは一体……」
「デューク。世界は終わりません。再び見える時には私も覚えては居ないのでしょうが、また宜しくお願いします」
言って、彼女は再び帝都へと視線を向けた。
間もなく、全てが「元に戻る」のだ。
「何て愚か、何て醜い……、世界が壊れぬからと、我等は」
それが唯一の救い。
その度に、彼の少女を、彼の青年を、知りながら止めない自分達が「殺して」いようとも。
「壊れぬからと……」
そして思う、同士であった彼の女傑は「これ」を知ったならば何と言うのであろうか、と。
いつもこの時に、彼女の言葉を聞きたくなる。同士でありながら、しかしヒトを想ってヒトと関わり続けてきた彼女ならば、何と答えてくれるのだろう。
いつも、世界が繰り返すその度に、いつも、いつも。