リネージュ2 投資物件 それは伝統的なwinter sports



「餅つきです? 鏡開きじゃなくて」
「本来は鏡開きなんだが、園じゃ人数が居るからな、鏡餅じゃ全員に行き渡る量が無いってわけ。で、ついでに餅つき」
 受験前に何だが、息抜きも兼ねて園に来ないか。と、エステルがユーリに誘われたのは元日の初詣の帰り道、年始の挨拶にと園へ向かっている途中のことだった。
 常日頃真面目に勉強しているエステルは、そう焦る必要も無く、また息抜きという理由でユーリと共に居られるならそれに越したことは無い。二つ返事で青年の申し出に頷き、そして誘われた当日である今日、一月十一日に園へと向かう道すがらにそのことを教えられたのだった。
 今頃、園の台所では大量のもち米が用意されているのだ、と続けたユーリ。
「一応、チビ達に伝統行事を体験させるって名目もあるんだけど。少なくとも少し上の奴等にとっては、労働の対価に与えられる餅が魅力的な年中行事になってるな」
「ユーリもです?」
「売ってる切り餅とは、やっぱ違うし」
 ちなみにつき上がった餅は、一口大にされた後、みたらし、きなこ、小豆、醤油の四種類の味を付けられ、子供達に配布される。
「息抜き、っつったけど、優先順位はチビ達だからエステルには少し手伝ってもらうことになるんだが……」
「はい、喜んで。でも、少しだけわたしもやってみたいです」
「餅つき?」
「テレビでは見たことがありますけど、折角です、体験してみたいと思ったんですけど……。駄目、です?」
「いや、構わないけど。下手すると腕の筋痛めるから、少しだけな」
「少しだけです?」
 知識を得ることには貪欲な少女は、体験する機会があればとことんまで追求しようとする。しかし、今年は思う存分そうさせてやれない理由があった。
「筋痛めて手が使えないのは不味いだろ。あんた、受験生なんだし」
「それは、そうですけど」
「せめて来年だな」
「それなら、来年まで鍛えておきます!」
 来年こそは、と初めてもまだなのにやる気満々のエステルに、ユーリは苦笑しつつ彼女の頭を撫でる。
(まあ、筋肉痛になれば少しは考え直す、か?)
 己でさえ、初めて本格的につき手になった年は、翌日、腕は筋肉痛で持ち上げるのが億劫だった。それはフレンも同様で、二人よりも長く杵を振るっていたウンディーネがいつも通りきびきび動いている姿に、揃って疑問よりも先に納得してしまったものだ。
 しかしユーリの考えは甘かったのかもしれない。餅つきが始まった後、エステルがウンディーネの勇姿を見てより一層来年への決意を固め、そして持ち前の生真面目さと知識欲を原動にそれを軽々と成し遂げるだけの自主トレをやり遂げてしまうことを、一欠片も想像していなかったのだから。
 更には年を経て男性チームと女性チームに分かれて、いかに早く餅をつくか、という競技にまで発展することになるのだが――今はまだ、その片鱗すらなく、後に自分が補助しながらも気が済むまでやらせておいた方が良かったのかもしれない、と悔やむことも青年は知らなかった。


それは伝統的
winter sports?
怪我にはご注意、出来立てあつあつ火傷にご注意、冬の伝統的運動には危険がいっぱい。
鏡開きの日、ということで小話の種が出て来たので書いてみました、な時節的掌編です。我が家の鏡餅はまだ開いてませんが、どうやって食べるか検討中。ちなみに、四種類の中では私はみたらしか醤油が好みです。(聞いてない)
[脱稿:09'1.9 掲載:09'1.11]


* Close