「このギルドでは、自らもしくはボクが要請することで依頼を受けてもらいます。運営にもお金が掛かりますから、その依頼の報酬の五パーセントはギルドの物に、残りはパーティ全員で等分となります。最初は支度金で装備を整え、以降は自身が得た報酬や探索で手に入れた物でまかなって下さいね。ショップは一階にありますから。ああ、食事は食堂で自分で作るなり、パニールさんに作ってもらうなりして下さい。余程の大喰らいでなければ別途食費を頂くことはありません」
一通り、ということで話し始めたチャットは言葉を止めて二人を見た。
「ここまでで何かご質問は?」
「いや、大体分かった。働かざる者食うべからず、だろ?」
「そうなんです?」
「そうだろ。食費は特に徴収しないってことは、それはギルドの運営費から出てる、オレ達が依頼をこなすことで入る運営費だ、良い物食いたきゃ、ちゃっちゃと働けってな」
肩を竦めて説明した青年に、少女はなるほどと納得したように頷く。その様子を見ていた船長は大丈夫でしょうか、と小さく吐息を漏らしてから、二人と自分以外のこの場に居る者へと視線を向ける。
「それでリティスさんは報告ですよね」
「はい。依頼の品、ラベンダー五つです」
小さな皮袋をチャットに差し出した彼女に、受け取った船長は中身を確認して満足げに頷いた。
「確かに受け取りました。では、これが依頼人から預かっていた報酬です」
交換にとガルドの入った皮袋がガントレットがはめられた手の上に置かれた。
「有難う御座います」
「こちらこそ、リティスさんは仕事が速い上に丁寧で、依頼人の評判も良いのでボクも助かってます。今回は他の皆が出払っていて一人での探索だったでしょう。大丈夫でしたか?」
「運良く入口付近で幾つか見つかりましたから」
「そうですか。……という感じで、依頼を終えたらボクに報告してもらうことになります。報酬はガルドと、他に物品がある時もありますので、それは依頼の内容で確認して下さいね」
しっかり例とされたらしい今のやり取りに、リティスは苦笑する。
「チャット。お二人にはまず、粘菌の巣で採取をして頂いてはどうでしょう? 丁度、小麦粉の在庫が少なくなっていますから」
「ああ、それはいいですね。では、練習代わりにボクから要請しましょう」
彼女の提案に頷いたチャットは、ユーリとエステルへと視線を戻して口を開いた。
「お二人には粘菌の巣で小麦粉の材料となる小麦を五つ採取して来てもらいます。最初ですから支度金を千ガルドをお渡しします。無事採取してきた物を渡して頂いた時に、五百ガルドを報酬としてお支払いしますから」
「粘菌の巣ねぇ、まあ、肩慣らしには丁度良いか」
「粘菌の巣……キノコや野草が多く分布し、昆虫や植物系の魔物が生息する場所、です。ここで取れる小麦は質が良い、と本に書かれていました」
「そんじゃ、行くとするか」
「ではこちらの支度金を。リティスさん、済みませんがお二人をショップまで案内してもらえますか」
支度金をユーリに手渡した後、こう言ったチャットにリティスは微笑と共に頷く。
「分かりました。それから、キラービー討伐の依頼がありましたからそれを受けます。粘菌の巣の入口までお二人を案内した後、私もクエストに入りますから」
「続けてですか? それは、ボクとしては助かりますけれど、疲れているのでは?」
「さほどではありませんから。それではユーリさん、エステリーゼさん、ショップにご案内しますね」
気をつけてください、とチャットの言葉に頷いてから二人を促したリティスに、ユーリとエステルも彼女に続いて機関室を出た。ホールを抜けて船の一室に当たるショップへと向かうと、受け取った支度金で武器防具の見直しと道具の購入を済ませた。
慣れた様子で買い物を終えて先に出ていたリティスは、廊下の壁に寄りかかって装備の見直しをしていたらしい。二人に気付いて銀の刃を鞘に納めた彼女に、ユーリは尋ねる。
「あんた、キラービーの討伐とか言ってたけど、本当に一人で良いの?」
「はい。自己回復の技も使えますし、あの場所は慣れていますから。勿論、無茶はしない前提で行きますので」
心配はいらない、とばかりにしっかりとした声で答えたリティスに、ユーリは吐息を漏らして肩を小さく竦めた。
「あの船長が手放しで褒めてたんだっけな、そう言えば」
「凄いです。ユーリ、私達も頑張りましょう!」
「あんたはあんま頑張り過ぎなくていいの。そんくらいが丁度良いんだよ」
「それ、どういう意味です?」
「フレンから頼まれてるんだ、あんま無茶し過ぎんなよ」
ぽん、と頭を叩いた青年に、エステルは少しだけむくれたような表情になる。宥めるようにもう一つ彼女の頭を叩いたユーリは、微笑ましそうに自分達のやり取りを見ていた少女に視線を向ける。
「そんじゃ、粘菌の巣まで頼む」
「お願いします」
「はい。行きましょう」
微笑んで了承した彼女は、今日から同じギルドに所属することとなった黒髪の青年と、花のような色を持つ少女を案内すべく先へと歩き始めた。