無料カウンター スイーツフルコース!【主人公・ユーリ・エステル・パニール】



「あんた、何読んでるんだ?」
「あ、ユーリ。これはパニールにお借りしたんですよ」
 喉の乾きに、甲板で少年達を相手に剣の鍛錬をしていたユーリが食堂へ顔を出すと、そこではテーブルの上に山積みされた本の前に座したエステルと、武器や防具を選定しながらノートに何やら書き込むリティスが。
「『イチゴの瞳に恋をして』? …………ああ、恋愛小説が好きなんだったか」
 食堂の主(と言っても良いだろう)の趣味を思い出し、エステルの持った本の題名を読み上げた青年はその貸し手の姿が見えないことに不思議そうな顔になった。彼女が食堂を空けることは珍しい。
「パニールなら、食材の仕入れの件でチャットと次の寄港地について相談しているはずです」
「ああ、なるほど。で、エステルは読書で、あんたは……手入れか?」
「いいえ。探索中に手に入れたりした武器や防具の数が多くなってきましたから、倉庫の整理も兼ねて、リストを作っています」
「へえ。あんたのだけじゃないだろうに、悪いな」
「気にしないでください、パニールのお手伝いも兼ねていますし、ちゃんとご褒美があるからそれを目当てにというのもありますので」
 にこ、と笑んだリティスの言葉にユーリは勿論、エステルも不思議そうな表情になった。
「リティス、ご褒美です?」
「何だ、エステルも知らないの?」
「エステルは私の後に来ましたから。ご褒美は、パニールのスイーツフルコースです」
 とても嬉しそうに語った彼女の言葉に、ユーリとエステルは目の色を変える。
「それ、オレも手伝っていい?」
「わ、わたしもお手伝いしたいです!」
「大丈夫ですよ? もうほとんど終わっていますから。エステルはゆっくり続きを読んでいてください。ユーリも、何か用事があって此方に来たんですよね?」
 本人に悪気は無いのだろう、ごく自然にこう返したリティスに、二人の表情が目に見えて暗くなった。自分は何か悪いことを言っただろうか、不思議に思いながらもノートを閉じる彼女。
「あら、ユーリさんもいらっしゃったのですね」
「パニール、お話は終わりましたか?」
「ええ。明日一日、闘技場近くに停泊して頂くことになりました。リティスさん、お手伝い有難う御座いました」
「これくらい、いつでも。それにパニールのお菓子尽くしが楽しみでしたから」
「ふふ、もうそろそろレモンパイも焼き上がりますし、まずチャイを出しましょうね」
「あ、私も行きます」
 片付けて席を立ったリティスは、座っていても良いのにと言うパニールに笑顔で促し、キッチンの中へ。
 それを見ていたユーリは椅子に座り込んで肩を落とし、エステルは羨ましそうに溜息を漏らした。食堂に漂う甘い匂いが今は酷く神経を逆撫でする。
「チャイ、レモンパイ、フレンチトースト、サヴァラン……」
「ユーリ、言わないでください。ますます吹っ切れません」
「クレープシュゼット、フルーツグラタン、紅茶クッキー…………」
「はい、紅茶クッキーですか?」
 ユーリの呟きに答えるように響いたリティスの声に顔を上げた二人は、彼女の持つトレイの上の物を見て目を輝かせた。
「フルコース全部はさすがに食べ切れませんから、お二人とも手伝って頂けますか? もし無理そうなら他に誰か……」
「いや、イケる。任せろって」
「はい。喜んでお手伝いします」
「そうですか? では、お願いしますね」
 にっこり笑んで、二人の前にチャイの入ったグラスを置き、紅茶クッキーが盛られたプレートをテーブルの中央に置いた彼女の背と頭の上に、天使の羽と輪が見えた――と、少々行き過ぎた感があるが、甘味好きの黒髪の青年は最大の感謝を込めて後に語ったとか語らないとか。


断言する、近来稀に見る幸せな時間だった!
……ユーリ、何だか少し性格変わってません?
マイソロ2のアホな小話その一。だって、パニール・スイーツと言い、パニールのくれるレシピにはおいしそうなスイーツがあるんですもの! きっとそれらの全部が並べられたら甘い物好きにはたまらないと思う。ちなみにリティスさんは本当に素です。打算で手伝いを申し出たのをバッサリ斬ったのは、純粋にエステルには本の続きを読んで欲しいのと、ユーリは何か用事があるのだと思ったから。こんなアホな小話とかも色々書きたいと思っています。
[脱稿:09'2.28 掲載:09'3.5]


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