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6.卒業

【現代パラレル「毎日がSpecialday」設定/ユーリ22歳・カロル13歳/番外編的/掌編】


 三月も下旬となった日曜日。例年なら桜が咲き始めてもおかしくない時期だが、今年は常に無く遅く、蕾もまだようやく膨らみ始めたといったところ。
 今日は園の子供達が通う小学校の卒業式だ。
 毎年必ず誰かしらこの式の主役となる子供達が居ることから、園長のウンディーネは常連と言っても良く、またこの街の慈善活動に深く関わっていることから学校関係者のみならず、父兄からも良く声を掛けられて忙しくしていた。
 今年の主役である少年――カロルは、最後のHRを終えて校舎を出て来て保護者である彼女のそんな姿を見つけ、いつ頃帰れるのだろうかと一つ息を吐く。
「今日の主役が溜息か?」
 くつりと笑いながら掛けられた声。良く知る、しかしこの場で聞けるとは思っていなかったその声に、カロルは驚きと共に視線を向けた。
「ユーリ!」
「よ。今日はおめでとさん」
 片手を挙げた青年を見つけ、少年は思わずまじまじとその姿を見つめる。そのいかにも珍しいものを見たと言うような視線に、彼は肩を竦める。
 いつも背中に流されている黒髪は一つに束ねられ、カジュアルな服装と正反対のきっちりとしたスーツを着ている。変わらないのは凛とした立ち姿や雰囲気だが、前述のものがそれすら変えているように見えた。
「そんなに珍しい?」
「うん。ユーリもそんな服持ってたんだね」
「そりゃな。前はこれが仕事着だったんだ。久々にクローゼットから出してきて、防虫剤臭いぜ」
 ここも思わず緩めたくなる、ときっちりとネクタイの締められた首元に指を掛けて溜息を吐く彼に、カロルは笑う。
「やっぱユーリはユーリだね」
「中身はそう変わるもんじゃねぇし」
 しかし必要とあらばその装いに相応しい態度くらい取れるのだろう。この年上の男の器用さを知っている少年が内心で思うと、そう言えばと小首を傾げて改めて青年に視線を向けた。
「どうしてユーリが? お店の開店準備で忙しいってついこの間ユーリから聞いたばっかりなのに」
「嘘じゃねぇぜ? オープンまで間もないし。まあディーネがあんな感じになるのは毎年のことだけど、今日は色々あるらしいから。頼まれたってのが一つ」
「他にもあるの?」
「後は、カロル先生の卒業式だからってのだな」
「ボク?」
「オレが道を見つけるきっかけをくれた恩人だ。出ないわけにはいかないだろ。そうじゃなくても、同じ園出身の兄代わりとしてな」
 に、と笑った青年に、カロルは照れたように頬を指先で掻く。
「カロル、卒業おめでとう」
「うん! 有難う、ユーリ!」

*現代パラレルであまりないユーリとカロルのお話。

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