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16.気配

【本編中/カプワ・トリム後~カルボクラム前/ユーリ独白/掌編】


 夜中にふと目覚めた。不寝番をしていたラピードが頭を上げるのに気付き、半身を起こして相棒の頭を撫でる青年。
 周囲を見回せば焚き火の周りに見える大小三つの塊。
(分かんねぇもんだぜ……)
 盗まれた水道魔導器の魔核を取り戻す為に帝都を出た時は、城の牢屋から抜け出す途中に出会ったフレンを追いかけなければという少女と、己の相棒だけだった。
 それが今や、奇妙な縁で更に二人増え、結界の外に出たばかりか大陸まで渡っている。
 下町に居た頃は、日中は何かしら言いつけられた用事で動いていて、けれど夜には下宿先の部屋に帰って一人で過ごして。だからこそ青年は、朝も昼も夜も、一日を通してどころか日を跨いでまでも共にある気配というものに慣れなかった。
 おはようと言い、おやすみと言い、そして夜を越えて新しい朝を迎えると再び繰り返される挨拶。
 慣れないと言いながら気付いているのだ、日々少しずつそれに違和感を感じなくなっていく自分に。
 相棒のように、共に在るのが当たり前のようになっていく気配に。
「……おかしなもんだよな」
 遠くに聞こえる虫の音か、或いは近くの焚き火の爆ぜる音か、どちらにせよ吐息よりも小さな声が零れ落ちる。それを耳に拾った青い毛並みの相棒は耳をピクリと動かした後に同意するように尾を一振りした。
 彼の当惑が確固たるものとなり、それをその身をもって思い知ることになるのは、この時から更に数ヶ月後の、暗い森の中となる。


*実は「8.名前を呼んで」の前あたり。問答無用の超掌編。

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