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37.メトロポリス

【現代パラレル「毎日がSpecialday」設定/ユーリ22歳・エステル19歳/掌編】

 じぃっ、と窓の外を眺めている後姿に、ユーリは冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出しながら問い掛けた。
「何か面白いもんでも見える?」
 独特の音と共にキャップを開け、ボトルの中身を呷る。乾いた喉を潤すと共に、冷えた液体が火照った体を内側から冷やしていく感覚。唇の端から伝い落ちた雫を右手の甲で拭ったその時、返事が返る。
「はい。街の夜景が見えます」
 相変わらず外を眺めたままの彼女の答えに、青年は静かに歩み寄ってその肩越しに窓の外へと目を向けた。
 眼下に広がるネオンライトに彩られた大都会の夜景。首都を縦横に道路や高速道路には、列なる車のテールランプが作り出した光の川。闇夜に立ち並ぶモノリスに点在する光が、本物の空に浮かぶ星のように見えなくもない。
「結構遅い時間なのに、これだけ光に溢れてるのはさすがに首都ってとこか」
「宇宙からでも、光でくっきり浮かび上がって見えるそうですよ」
「お陰で空のホンモノはろくに見えやしねぇけど」
「そうですね。でも、これはこれで綺麗です」
 窓に手を添えて飽きない様子で見つめ続ける彼女に、その後ろに立った青年は嘆息して窓から引き剥がすように背後から引き寄せて腕の中に閉じ込める。
「ユーリ?」
「天然? それともワザと?」
 端的な問い掛けに小首を傾げた彼女は、しかし僅かに思案した後に問い掛けの主題に気付いて頬を淡く染めた。背後から抱き締める青年には見えないだろうが、確実に上がった体温でもしかしたら気付かれるかもしれない。
「……どっちだと思います?」
「始めは前者で、今は後者ってトコか」
 意図して耳元に寄せられた青年の口から声が漏れると、細い肩が小さく揺れた。
 それは声か、それとも掛かった吐息のせいか。
 くつりと笑った気配に振り仰ぐように顔を上げた少女は、自分だけの闇が降りて来たことに気付き、静かに瞼を伏せた。
 大都会《メトロポリス》の片隅で、恋人達の夜は過ぎていく。

*場所はシティホテルとかでしょうか。ちょっと大人な雰囲気な現代パラレルの二人。

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