【本編第二部/IFの世界「endless world」設定/掌編】
※この掌編はIFの世界の「endless world」設定が前提となっています。関連三話と違い、キャラクターの死などには触れておりませんが、「endless world」を読まれていないと意味が分からない部分もあります。ご了承の上、ご覧ください。
時折、白昼夢のようなものに襲われることがあった。
ふとした会話の合間や、街に到着した時や――だが、一番多いのは、それに一人の少女が関係している時だ。
今も、また。
ユーリは受け取ったそれに視線を落としながら思っていた。まるで、一度同じことがあったかのような、既視感《デジャヴ》。
「ユーリ?」
「――あ、ああ」
急に黙り込んだユーリに不思議そうな表情で名を呼んだエステル。青年はハッとしたように返事をすると、もう一度何かを確かめるように『それ』を見つめた。
決して華美では無い、しかし一目で価値のある物と分かる花を模した髪飾り。新しさは感じないが、大切にされていたのだろう、そんな想いさえ伝わってきそうな。
「これ、大事なものだろ」
「……母の、形見です。幼い頃は良く、お守り代わりに身に着けていました」
でも、頼ってはいけないんです。
まだ少し揺れている、そんな小さな声で呟くように言った少女。
手放させてはならない。何故か強烈にその思いにとらわれ、ユーリは己の手の平の上の髪飾りから視線を上げ、自分を見つめるエステルに視線を合わせる。
「預かっとく」
「……ユーリ?」
「あんたは結構突っ走りやすいし、だから、あんたがどうしようもならなくなったその時に返す」
この言葉とこの髪飾り、それが揃えば『あの悪夢』もきっと……。
一瞬、彼の脳裏に浮かんだ言葉と映像はすぐに掻き消え、違和感を残した。白昼夢を見た後のような、そんな感覚を。
「いい?」
「分かりました。ユーリに、預けます」
僅かの逡巡の後、しかし先ほどの呟きに混じった揺れは今は微塵も無くしっかりと頷いた少女に、ユーリは手の中の髪飾りを至宝の如くやんわりと握り締めた。
*こうした小さな積み重ねが「おわらないせかい」を壊すきっかけの一つとなっている、という掌編。