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52.手紙

【ED後/「waltz.」設定・未来/ヨーデル&フレン/掌編】

「ヨーデル様、これを」
 執務の合間に設けられたごく僅かな休憩時間。女官が紅茶を淹れて退出するのと入れ違いに入ってきた騎士団長は、どこに持っていたのか一通の手紙を取り出し、ヨーデルの前に差し出した。
 公的なものならば文官が持って来るが、こうしてフレンが持ってきたということはそうでは無いのだろう。若き皇帝は差し出されたそれを手に取ると、宛名を見て口元を綻ばせる。
 つたない筆跡で「ヨーデル小父様へ」と記された封筒を裏返せば、差出人の名は思った通りのものだった。
「誰が?」
「レイヴンが。帝都に向かう途中で立ち寄った際に、と」
「ああ、定期報告の謁見は明日でしたね。では終了後に直接お礼を言いましょうか」
 言いながら執務机の引出しを開けて自らペーパーナイフを取り出した彼は、丁寧に開き便箋を取り出す。
 そこに記された文字も宛名と同じくつたないものではあったが、しかし差出人の年齢を考えれば、これだけしっかり文章が書けることに感心してしまう。挨拶から始まり、近況を伝え、そして本題。その本題に差し掛かった時、ヨーデルの青い瞳は驚きに見開かれた。
「陛下、いかがされましたか?」
 差出人のことはこちらも良く知っているフレンが、良くない知らせだろうかと声に滲ませて尋ねれば、ヨーデルはゆるりと首を振る。
「案ずるようなことでは無いですよ、フレン。いえ……、ある意味では案ずることではあるのだけれど」
「は……?」
 分からない、と疑問を顔に浮かべた右腕たる金髪の青年を見上げ、皇帝は微笑みのままに告げた。
「家族が増えるそうです」
「………………増えるっ!?」
 いくら他の者の目が無く、公的な場より幾分か気安い態度となっていたとは言え、それでもあまりないその反応に、ヨーデルは声を立てて笑う。
「今年の冬頃になる、と父親が言っていたと」
「そ、そう、ですか」
「それから、追伸で彼が。近々此方に来るそうです。このことを伝えに、でしょうね」
 紙面に落として最後まで読み終えたヨーデルは、丁寧に畳んで封筒に入れると、お祝いを考えておかないと、と呟いた。
「ああ、けれど少し困りましたね」
「は。何がでしょう?」
「祝いの品を男の子用にするか女の子用にするか、ですよ。それとも祝辞だけにして、祝いの品は後日にすべきでしょうか。ゆりかごはきっとお下がりを使うのでしょうし、あっても困らない物と言えば……」
「陛下、僭越ながら少しお気が早いのでは」
 苦笑しながら奏上した青年に、しかし若き皇帝は微笑みを絶やさぬままに返す。
「早いに越したことはありません。遠縁とは言えエステリーゼは親族で、私の副帝でもあったのですから。公的に祝辞を述べる機会が無いなら、私的に祝っても構わないでしょう」
「そう言って、あの子の時も早くから色々贈られてエステリーゼ様にお礼と共に窘められたのでは?」
「……そうでした」
 僅かに照れたように笑みながら、しかし祝うことは決定事項らしい。休憩もそっちのけでどうするか考え始めた姿に、金髪の青年は苦笑しつつ、手紙で知らせてくれた少年の父親たる黒髪の親友とその妻であるかつての皇女を思い浮かべ、彼等にもたらされた新しい「幸せ」を心から祝うのだった。

*「35.欠片」の四年後くらい。小父馬鹿な天然陛下が書いてみたかったのです。

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