そういう場所を知ったのは、騎士見習いの頃だった。同期の割と良くつるんでた奴の一人に連れられて行ったのが始まりだ。
薄暗い部屋、部屋の割に広い寝台、体の線が露な辛うじて服と呼べる衣装を纏った女。
興味が無かった訳じゃないから、流れのままに従った。それまで知らなかった感触と感覚を知ったオレは、けれどそれにのめり込むことも無く、数回行った後は任務から戻った時に昂ぶる気を静めに時折行くくらいだった。
拘りは無かったが面倒だったこともあり、相手はいつも同じだった。一度だけ居ない日に当たった時に違う女を相手にしたが、面倒だったのだ。
だがそれだけ。互いに名前も知らないし、次の約束も一度もしたことは無い。オレが騎士団を辞めたと同時に、そういう場所へ行くことも無くなった。
多くも無く少なくも無い夜の中で、その度に見下ろしていた相手だが、顔すらおぼろげだ。せいぜい髪が銀で眼の色が碧ということを何となく憶えているだけで。
それよりも言葉の方がよほどハッキリ思い出せる。必要以外の会話も少なかった中、珍しいと感じたその言葉。
「見つかるといいわね、お互いに」
そんなことを、今更思い出すことになろうとは、つい数時間前には欠片も思いもしていなかった。