データ復旧 中古パソコン Offline「Re:waltz. Compilation of Knight and Princess」Sample



「Re:waltz. Compilation of Knight and Princess」
[文庫判/FCオンデマンドカバー/160P/R18] 1800円
※18歳未満の方には頒布出来ません。お求めの際には年齢確認が可能な
身分証明書をご提示頂きます。

【サンプル】
Happy Happy Birthday!」「胡蝶の夢」「Cavalier
月の裏側」「薄紅の舞う、その下で」「Last Love Letter
*タイトルクリックでダイレクトに飛びます。



Happy Happy Birthday!」より冒頭


 ふと目の疲れを覚えて手を止めた彼女は、時を示す魔導器――親友である帝国随一の魔導士お手製――を見て、あと数分で『今日』が終わることを知った。
「いけない、早く休んでくださいと言われていたのに……」
 明日はエステルの誕生日だ。
 昨年までは、次期皇帝位継承者が正式に決まっていなかった為、内輪でささやかに祝うのみであったが、今年無事に新皇帝は即位し、彼女もまた副帝となった。従って、正式に誕生祝賀会が催されることとなったのだが……。
「ユーリとゆっくり話せる時間は、とれなさそう、です」
 ふぅ、と残念そうなため息が漏れた。
 この国に白と黒の騎士あり。
 通常は皇帝または次期皇帝位継承者にだけ許される近衛隊。しかしエステルは皇族の始祖たる満月の子と同等の力を持つ当代の満月の子とされた為、皇族に時折生まれる満月の子に許された数ある特権――もしくは義務と言う――として、近衛騎士と近衛隊を持つこととなった。
 皇族の近衛騎士は騎士の中の騎士『聖騎士』の称号が与えられ、時として主の代理として動くこともあることから、警護に関しての一切の責任を持つことになる。
 故に、エステルの近衛騎士であるユーリは、ここ数日は主の初めての公式な誕生祝賀会開催に当たって、そのあらゆる事象への指示や打合せで主役本人以上に忙しいらしく、今日などは朝に予定の確認と警備の騎士との顔合わせの際に少し話しただけ――しかも内容は公的なものなので、エステルが話したいユーリではない――なのだ。
 それでも少しだけ期待していた夜の訪れだが、この時間ではそれも無いだろう。
 もう一つ、溜息が漏れて、エステルは自嘲した。
「ユーリは、わたしの為に頑張ってくれてるんですから」
 明日、祝賀会での予定でも賓客との挨拶が終了すれば少しは時間が取れるだろう。それに、会場に行く前に僅かでも主従でない二人として言葉を交わせるかもしれない。
 そう期待しながら本を閉じ、眼鏡を置いて椅子から立ち上がった時。
 控え目に扉が叩かれた気配に、もしかしてと上擦りそうになる声を抑えてエステルは尋ね返した。
「誰、です?」
「近衛騎士ユーリ・ローウェルに御座います」



*続きは「Re:waltz. Compilation of Knight and Princess」で。





胡蝶の夢」よりR18部分除いた冒頭


「…………っ!?」
 がばり、と正に跳ね起きると言う行動を表したかのように身を起こした彼女は、周囲を見回してそこが自分の部屋であることを確認すると、ほぅ、と吐息を漏らした。
 今日は晴天なのだろう、締切られたカーテンの隙間からまばゆいばかりの光が零れ、絨毯に細い光の道を描き出している。
「また、です」
 これで四日、だろうか。
 突然の風邪に三日寝込んで全快した後からだから、やはりそうだと彼女は一人頷いた。
 視界はいつも闇。
 夢なのに、まるで夢でないかのような強烈な感覚。
 初めて夢を見た後の朝は酷く戸惑った。しかしその夜も同じ夢を見て、今日まで同じことが続いている。その時はいつも「分かっていない」のに、起きた後は繰り返し夢見ているのを自覚しているのも、四度目。
 男女の閨事に関しては知識として知っていた。勉学と同じくらい好きな読書で読む物語にも、時折それを思わせるような描写が出てくるものがあった。
 けれど彼女自身は経験が無いことなのに、なぜあれほどまでに鮮烈な感覚まで再現されているのだろう。
「…………おかしいんでしょうか」
 疑問に思えば自分で調べ、それでも分からなければ誰かに尋ねる。彼女は今までそうやって解決してきたけれど、こればかりはさすがにそうもいかないことだと、友人曰く「世間ずれ」している彼女とてそう思っているからこそ、四日目の朝を迎えているのだ。
 はしたない。
 尋ねる当てが全く無いわけでは無いのに、そうしないのは夢に疑問は覚えても、決して嫌悪を抱いていないという彼女の気持ちがそう思わせてのこと。
 ただただ熱に浮かされ、与えられる衝動。そしてほんの僅かな吐息と触れる手。
「だれ、なんです?」
 もっと。
 無意識下で求める「誰か」は誰なのだろう、とそう思いながらも、彼女は密かに想いを交わした相手である自らの騎士であれば良いのに、と思う。
 直接に想いを言い交わしたわけではない。けれど主君への忠誠と敬愛とは全く違う、異性への好意というものを向けられているのは確かだ。
 それは自惚れでも何でもない、事実。
 互いの立場故に秘さるを得ない恋ではあるけれども、この想いを育んでいれば、きっと。
 不意に響いた音に、自らの思考を覗き見られたかのようにびくりと肩を揺らした彼女。扉を叩く音だと気付いて一つ息を吐いてから誰何すれば、彼女付きの侍女が起床の時間だと答えた。
 そうだ、今日は延期されていた皇帝との会議があるのだ。それまではある程度前倒しで進められていたからこそ、彼女が突発的に公務を休んでも支障は出なかったが、今日を逃せば後は遅れる一方となる。
「起きています」
 いつまでも夢について考えてばかりは居られない。
 皇帝との会議を始め、他にも様々な雑務が待っている。差し当たっては、身支度をして朝食という名の打ち合せに行かねばならないだろう。返事すれば、静かに侍女が入室して朝の挨拶をした。
「おはようございます、エステリーゼ殿下」



*続きは「Re:waltz. Compilation of Knight and Princess」で。





Cavalier」より冒頭(※TOW RM2騎士姫設定)


「エステリーゼ様、お怪我は御座いませんね?」
「はい。……思っていた以上に追っ手がつきましたね」
「ヨーデル様と騎士団長代行から漏れることはまずありませんから……。街に鼠が放たれていたと考える他無いでしょう」
 ヒュッ、と剣を振って血糊を払うと、黒髪の青年は静かに剣を収めた。
「ユーリ……」
「ご心配には及びません。追っ手が諦めないのであれば、私が全て斬り伏せましょう。エステリーゼ様には指一本触れさせることは御座いませんので、ご安心を」
「はい。ユーリは私が誰よりも信じる騎士ですから、その言葉を疑うことはありません。でも……ユーリにばかり苦労を掛けて済みません」
 両手を胸の前で組んで心苦しそうに俯いた主に、彼女に仕える騎士はいいえと否定する。
「殿下に忠誠を誓いし騎士として、お守り出来ることに喜びを感じることはあれど、厭うことなど御座いません。ですが、私を案じて下さる殿下の御心はとても嬉しく思います」
 その言葉に顔を上げた少女は、青年の微笑を見て瞳を伏せ、一つ息を吸う。そして再び瞼を持ち上げた後は、憂い顔は消えていた。
「まだ、帝都を出て幾許も経たないというのに、これではいけませんね。……ユーリ、ヨーデルとフレンからの迎えが来るまで宜しくお願いします。……ですが、なるべくなら貴方も傷つかないように」
「Yes, Your Highness」
 いつまた追っ手が来るとも知れぬからか、さすがに膝をつくことはしなかったものの、右手を胸に置き立礼する青年。彼は頭を上げると少女に告げた。
「この先にある街で白鳥と落ち合う手はずとなっております。夜の闇に紛れてとなりますので、エステリーゼ様には今しばらくのご不便をお掛け致しますが……」
「構いません。彼に会って今後のことを話すのでしょう? 急ぎましょう、ユーリ」
「は。では、お手を」
 差し出された右手に左手を乗せた少女が頷くと、騎士は心持ち急ぎ足でその場から離れた。


 ――帝国。グラニデの中でも広大な国土を持ちながら、これまでその国境を他国に許すことがなかったその国は、この世界にあるどの国より歴史ある古い国と言われている。
 それ故に国家として名を持たなかったが、この国の他に国家が出来るようになると便宜上『テルカ・リュミレース』と呼ばれるようになった。由来ははっきりとしていないが、一説によると建国当時の古い言葉で『新しき祝福の地』という意を持つとか。
 他のどの国も持ち得ない技術によって各都市を結界で包み、魔物の脅威を排し、他国との接触を最低限に抑えていることから、外交に携わることの無い一般人からは半ば幻の国と思われてさえいた。



*続きは「Re:waltz. Compilation of Knight and Princess」で。





月の裏側」より冒頭


 皇帝位を継承しなかった若き女性皇族に課せられる、建国の頃より続く秘められし因習。
 ――満月に列なりし女子は、一族の血を分けし多くの次代を。
 一族に秘められた力は女系に強く現れることが多いということ、そして相手が誰であれ皇女が孕んだ子は、その血の半分は確実に皇統に列なるものとなることが、その因習を千年後の世まで廃れることなく続けられてきた要因でもある。
 勿論その因習は今を生きる皇族にとっても例外では無く、つい先年、先帝の甥が新帝として即位すると共に副帝として補佐に就いた皇女、エステリーゼ・シデス・ヒュラッセインにも課せられた責務であった。


 赤い薔薇。
 取り分け赤の濃い「ブラッディ・ローズ」と呼ばれる真紅の薔薇が皇女の部屋に飾られることは、彼女自身と、同じく皇族である現皇帝、城の侍女を統括する女官長、皇帝と副帝に信頼を於かれた侍女の一部、そして皇女と誓約を交わした近衛騎士、足してようやく両手の指が埋まるだけのごく限られた者だけが知る符牒である。
 月に一度、おおよそ決まった間隔で訪れる女性特有の生理現象。
 体内から血を流すその期間にだけ、その薔薇は飾られる。毎日一本ずつ増えていき、大抵は七本で増加は止まり――血の匂いを隠すように部屋に満ちていた香りの元は、毎朝必ず訪れる侍女の手によって片付けられる。
 彼女――エステリーゼにとって赤い薔薇とは、落胆と歓喜と両極にある感情をもたらすその象徴だ。
「また、今夜」
 侍女の手を借りて朝の支度を整えた後、窓際に飾られた薔薇を片付けるように言いつけると、心得た侍女は静かに頭を下げて七本の赤い薔薇が生けられた花瓶を手に皇女の部屋を後にした。
 エステリーゼが皇族に伝わる因習のことを知ったのは、月の満ち欠けが体に訪れたその日の夜のこと。かつて彼女の母にも仕えたことがあると言う女官長から、その因習の始まりから教えられたのだ。
 始まりは千年の昔、この世界――テルカ・リュミレースに起こった災厄を退ける為に、常人には無い特殊な力を持ち、その頃より人の世を治めていた「満月の子」と呼ばれる一族がその命を燃やして人柱となり、世界に今ひとたびの平和を取り戻したことによる。
 災厄は去ったが、その代わりに「満月の子」の数は激減した。残った彼等は乱れた世を正しながら、遠い未来に起こりうるかもしれない災厄の再来に備え、今の力を維持したまま一族を増やすことにした。
 これまでも一族間の婚姻は日常的に行われてきたが、より強い力を残す為にと更に近親婚が推奨されるようになった。しかしそれが二代、三代と続くごとに能力はともかく身体的に衰えていくようになり、近親婚の弊害を考慮して生まれたのが、今に伝わる因習。
 満月に列なる女子は、四親等内の血族との婚姻を禁ず。また、一族の者が少ない時には、血族外と婚姻し次代を増やし、その子等を四親等外の一族内で娶わせること。
 必要以上に血を薄くせず、しかし遙か後の世まで能力を保った子孫を残す為に。
 そしてこの時代。次代を残せる若い皇族は、現皇帝ヨーデル・アルギロス・ヒュラッセインと、その副帝エステリーゼ・シデス・ヒュラッセイン、帝国の頂点を担うこの二人だけ。
 長い時の中、巨大となった帝国に蓄積された闇が一族内に争いを招き、そのことが計らずもかつての災厄で一族が激減した時よりも数を減らしていたのだ。
 それが彼女にとっては、ある意味幸運だった。



*続きは「Re:waltz. Compilation of Knight and Princess」で。





薄紅の舞う、その下で」より冒頭


 ――昔々ある処に、一人の姫君と、一人の騎士がおりました。
 二人が出会ったのは良く晴れたある日。けれど出会いは普通では無く、姫君は悪い人に追いかけられていたのです。
お休みで自分が育った場所である下町を訪れていた騎士は、追われている姫君を偶然見つけ、悪い人達から助けました。
 城では無い場所で、姫君と騎士としてでは無い、一人の少女と一人の青年として出会った二人は、やがて青年が姫君の専属である近衛騎士となった後も、二人だけの時にはただの少女と青年としてお茶をしたりしながら過ごしていました。
 やがて姫君は自分を守ってくれる騎士を好きになり、騎士も姫君らしくない姫君を好きになります。けれど二人の間には大きな障害があり、それをお互いに良く分かっていたからこそ気持ちを伝えることが出来ませんでした。


「――姫君は騎士を好きな心を隠したまま、国が決めた相手と結婚することになりました。騎士もまた、姫君を好きな心を隠したまま、自分では無い者と結婚することになった姫君に仕え続けることにしました。せめて、ずっと傍に、剣として盾として在るのは自分だから、と。ずっと、ずっと」
 ぱらりと頁をめくり、続きを口にしようとした語り部役の老女は、不意に響いた幼い声に紙面から顔を上げることとなった。
「どうして?」
 純粋な疑問を持った顔で、小さな少女はもう一度口を開く。
「おひめさまは、きしさまがすきだったんでしょ?」
「ええ、そうですよ」
「きしさまも、おひめさまのことがすきだったんでしょ?」
「ええ」
 二つの問いに同意を示した語り部に、問い掛けた子供とは別の少し年上の少女が言った。
「好きなら言えば良かったのに。『障害』があっても、『好き』って言うことは出来たよね?」
「――そうですね」
 問い掛けに同意したものの、どうした方が良かったのだ、と自分の言葉を紡ぐことは無く、ただ苦笑した姿に、少女は続けて問い掛けようと開きかけた口を閉ざした。
 とても、哀しそうに見えたから。



*続きは「Re:waltz. Compilation of Knight and Princess」で。





Last Love Letter」より冒頭


「Your Royal Highness.」
 副帝として仕事をする為の部屋――執務室で、次の視察先についての資料に目を通していた彼女は、ノックの後に続いたその言葉に顔を上げて応えた。
「どうぞ、入ってください」
「は。失礼致します」
 声で誰なのかは分かっている。入室の許可を出すと、一拍置いてから部屋の扉が開き、一人の騎士が閉めた扉の前で一礼する。
「ご政務中に申し訳御座いません」
「構いません。この資料を確認したら休憩をと思っていた所です。――確か、ユーリは近衛隊の方で打ち合わせでは無かったです?」
 己の近衛である聖騎士ユーリ・ローウェルは、その殆どの時を彼女の傍に控えて過ごすのが常であるが、それでも直属の近衛隊や騎士団の会議があれば離れることもあるのだ。
 今朝方、自室に迎えに来た折に報告された内容では、今日の黒の近衛隊――ユーリを隊長とした直轄部隊――と、騎士団長以下の白の近衛隊――此方は騎士団長であり皇帝の近衛騎士、フレン・シーフォ率いる直轄部隊――との幹部会議であったはず。
 その終了予定はもう少し先の時間だったのでは、と机の上に置かれた時計を見て、やはりそうだと彼女は小首を傾げた。
「仰る通り、その予定でした。ですが、皇帝陛下のご予定が急に変わられたことで、騎士団長以下、白の近衛隊の出席が難しくなり延期された次第です」
「そうですか……。それなら、黒の近衛は動けるということです?」
「は。申し上げましたように会議が無くなりましたので。そうでなくともエステリーゼ殿下の命とあらば、何時如何なる時でも、すぐに」
 直立し、左手腕を曲げて握った拳を胸に当てて礼を取ったユーリの言葉に、彼女――副帝エステリーゼ・シデス・ヒュラッセインは苦笑を零した。
「ユーリ、二人だけですから口調、崩してください」
「承服致しかねます。我が君はご政務の最中でいらっしゃるでしょう」
「では、今から休憩です」
 丁度、確認も終わりましたから。と、残り数行に目を通してから、ファイルを置いたエステリーゼが微笑みを向ける。
「ユーリ?」
「……はぁ、分かった。で?」
「はい?」
「近衛を動かすってことは、どっか行きたいとこでもあるの?」



*続きは「Re:waltz. Compilation of Knight and Princess」で。






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