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1.見飽きた顔が愛おしい【幼馴染の恋五題】

【現代パラレル/フレリタ/掌編】

*この掌編は以下の設定とお題を用いて書いた、実験的な作品です。
・現代パラレルで、フレンとリタは幼馴染設定。
・フレンが引っ越した先の家の隣に、リタが住んでいた。
・年齢設定はゲーム版準拠。
・フレンが大学に入って、学生マンションに一人暮らし(ユーリも同じマンション)に行ってすぐ、リタは海外へ。
・フレンの両親存命(父の名前は映画から)。リタは父のみ存命で、父は現在海外の研究所に勤務。フレンの父とリタの父は同じ大学の先輩後輩で、その関係で空いた家はフレンの父が管理していた。
・使用お題「幼馴染の恋五題」配布サイト:リライト

(暑いな……)
 額に滲み、米神を伝い落ちてきた汗を手の甲で拭うと、彼は照りつける日差しをその手で遮りながら前方に目を凝らした。
 元々、大学に入る時には奨学金を得て親の負担にならないようにするつもりだった。幸いにして、成績優秀者の為の奨学金制度を利用することが出来た彼は、受給資格者へ優先的に融通される学生マンションに入居して大学生活を送ることに決めた。キャンパスから徒歩十分という恵まれ場所にある為、実家から通えば二時間近くかかる通学時間をその分、勉学へ当てることが出来るから、と。
 事実そうして良かった、とフレンは思っている。学生の為に、月二回の日曜以外は土日も利用出来る図書館や、たびたび開催される日曜講座は確かに青年の糧となっているからだ。
 フレンのその思いを尊重して、両親は長い休みでも実家への帰省を強制するわけでもなく彼の自由にさせてくれた。フレンもまた、両親の思いを感じ取り、休みの間まるまるとは行かないまでも数日単位での帰省はしていた。
 しかし今年の夏は、夏期休暇が開始すると同時に帰省し、このまま休暇が明ける九月中旬頃まで実家暮らしとなる。
(贅沢は言えないからな……)
 学生マンションの外装から内装まで、夏期休暇いっぱい利用して改装工事が行われるのだ。
 実家に帰省出来る者は帰省、事情があってそれが叶わない場合には用意されたマンスリーマンション。その費用は全額、奨学金を運営する団体が負担してくれるということで、フレンの親友であるユーリは助かったと漏らしていた。
 当然、帰れない距離では無い場所に実家があるフレンは、良い機会だからとこの夏を実家で過ごすことに決め、今朝早くに倉庫送りにした荷物以外の手荷物を持って、両親の暮らす家がある町へ帰ってきたのだった。
 門を開ける前に、ふと隣家の方へ目を向けたフレン。そして再びこめかみへと落ちてきた汗に気づき、先ほどと同じように拭いながら苦笑する。
 この三年間、実家に帰る度に同じことを繰り返している。本格的に家を出る前、青年が高校を卒業する頃には、ユーリとは違う幼馴染が住んでいた隣家。
 彼が実家を出て少し後に、国外の研究所に招待された父と共に外国へ行ってしまったと、親子が出国した後に母から知らされた時には少なからずショックを受けたものだ。
(元気だろうか)
 天才少女と知る人ぞ知る存在だった幼馴染は、人と接するよりも難解な数式を解くことを好む難しい性格をしていて、フレン達一家が越してきて父の縁で知り合った後も、かなりの時間普通に話すことは出来なかった。
 けれど少しずつ少しずつ距離は近づき、彼女が形式上通っていた小学校の高学年になる頃には、彼女の父に次いで良く話をする一人となっていて。
 だから、メールの一言でも良い、彼女自身から国外へ行くことを教えて欲しかったのだ。
 取りあえず、同じ大学の先輩後輩である父同士の縁があるので、知ろうと思えば消息がすぐ分かる点は安心しているが、それがあるからどうも尋ねることに躊躇いがある。
 フレンは小さく息を吐いて、それからキーケースの中から久しぶりに使う自宅の鍵を選び取り、扉を開けて玄関に足を踏み入れた。
「ただいま」
 居間で冷房をつけているのだろう、玄関もほんのりと冷えていて、炎天下の中を十分近く歩いて来たフレンはほっとしたように息を吐く。
 おかえりなさい、ちょっと待ってね。台所の方から響いた母の声に小さく笑った所で、彼は荷物を置いて靴を脱ごうと視線を足下に落とした。
 そこには明らかに女性用と思われるサンダルが一足。けれど大きさからして母の物では無い、来客中なのだろうかと思った所にパタパタと近づいて来たスリッパを履いた足音。
「おかえり」
 当たり前のように掛けられた言葉に驚きながら顔を上げたフレンは、そこに立っている人物を見て更に目を見開いた。
「……おかえり、って言ったんだけど?」
 僅かに眉を寄せ、声を低くして言った彼女――三年ぶりに見る幼馴染の少女に、フレンは、ははっ、と小さく笑う。
「それなら、僕にも言う権利はあるだろう?」
 小学校に上がる小さな頃から、卒業するまで毎日見てきた少女。勿論その間にも段々と成長して顔つきも変わって行ったことを知っているし、特に思春期の少女の三年は長かったのだと、今し方色々な意味で驚いていた中でも思った所だけれど。
 それでも、家族とは違う意味で見飽きた顔でもあったのに。
「それもそうね」
 相変わらずの口調、相変わらずの表情。
 三年の空白がそれだけで一気に埋まったかのような感覚と、そしてそれまで抱いたことの無かった思いがフレンの中に生まれた。
「おかえり。でもってただいま、フレン」
「うん。おかえり、そしてただいま、リタ」
 微笑しながら言った青年に、少女は満足そうに笑みを返して。
 見飽きた顔が愛おしい、ついさっき生まれたばかりの思いに無自覚のまま更にその言葉を加えたフレンは、早く来なさいよ、と踵を返して先に居間に戻った少女を追う為に靴を脱いで家に上がった。


*原稿の合間に衝動的に書き上がった一作。このお題を見た時にふっと浮かんだのが幼馴染なフレリタだったんです。取り合えずお試しで載せてみました。(もしかしたら知らない内に消えてるかも)
*フレン絡みの推奨カプ第一位はフレジュなのですが、フレリタも結構好きです。

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