占い True Love?【3】




!Caution!
この話はユーリの過去の女性関係に関する捏造を含み、
それに際して原作ゲーム中にも登場しないオリジナルキャラが登場します。
「waltz」のシリーズ上のお話ですが、読まなくてもこの後の話は問題なく
読み進めて頂けます。

上記に関することで受け付けられないと感じられた方は、
このまま窓を閉じて頂けますようお願い致します。
読後に上記に関することについての苦情等は一切ご遠慮ください。

了解、読むという方はスクロールどうぞ。













 ギルドの巣窟ダングレスト。
 常に宵闇に包まれたようなこの街に一行が到着したのはヘリオードに滞在した翌日の昼過ぎのことだった。
 到着し、取り合えず依頼人のカタリナを休ませる為にとアルクトゥルスに部屋を取ると、頻繁に訪れていることである意味気安い間柄の宿の主人の世間話の中で、ここ数日はダングレスト周辺も天候が荒れに荒れていたのだと聞いた。
 カロルとジュディスはレイヴンを引き摺るようにユニオンの本部へ向かい、無事にカウフマン女史と会うことが出来たらしい。丁重に礼を言った後、久々に顔を出す天を射る矢の幹部兼ギルド騎士団合同自警団のまとめ役のレイヴンは、手土産代わりにとそのままカウフマンに引き渡され、この数ヶ月で溜まりに溜まっていたユニオンの仕事を片付けるべく缶詰と相成った。
 折りしもこれまでの疲れが出て体調が良くないカタリナを休ませる為、出発は明後日の朝へと延期となる。
 カロルはギルドの首領としてユニオンに行き、ジュディスは愛用の槍を手入れした後に何処かへ、リタは部屋に篭って器具を手にかつて魔導器の筐体をいじり、エステルはリタと同じ部屋で読書を、レイヴンはユニオン本部で缶詰、ユーリはラピードを伴って買出しに。
 思い思いに過ごした一日、約一名を除いて夕食までに宿に戻ってきた面々は、食堂に会してそれぞれに何があったのかを伝え合った。
 そして、宵闇の街が真に闇に包まれた頃、青年は寝台の上で大の字になって眠る少年を起こさぬようにしながら部屋を抜け出した。ラピードは気付いていたようだが、耳をピクリと動かしただけで伏せたまま動かない。相棒の心遣いに小さく笑いながら外に出た彼は、そこで思わず足を止める。
 ピタリと動きを止め、闇の中に立つ姿を見つけた彼に気付いたのか、先客が口を開いた。
「しまった、って顔してる」
 笑いを含んだ声で言われ、ユーリは言葉に詰まり、頭を掻いた。
「……実際、何て声を掛けるべきか迷ったし」
「普通に『こんばんは』、で良いと思うわ。今は、言葉以外に気持ちを伝える手段は無いもの」
 そうでしょう、と言葉の裏にある意味を含めて言った女性に、ユーリは肩を竦めた。
「じゃあ、こんばんは」
「えぇ、こんばんは」
 傍から見たら何ておかしなことをしているのだろうか。互いにそう思ったのか、ユーリとカタリナは顔を見合わせて小さく笑い合う。
「今更だが、もういいのか」
「えぇ。夕方からついさっきまでぐっすり。不規則な生活は駄目だって分かっているんだけど、夕食抜きで我慢の限界だったのね、女将さんが用意していてくれた野菜のスープを一気飲みよ」
 スプーンを使うのもまどろっこしいとばかりに、こう、お皿を持ち上げて。両手でその動作をして見せた彼女に、ユーリは耐え切れずに吹き出した。
「まあ、仕方ないんじゃないの。今のあんたは、二人分必要なんだし」
「……そうね」
 視線を落としてゆるりとお腹を撫でたカタリナの表情は、正に母性そのものを表したかのよう。
 ああ、彼女に必要以上に関わらないように距離を取っていたのは、これも理由の一つだろう。青年の過去の片隅におぼろげに残る表情と、欠片も重ならない「母親」の顔。
「確かにマンタイクに連れて行ってくれる人を探してたけど、まさかそれが凛々の明星とは思ってなかったわ。凛々の明星が引き受けてくれた、って話を聞いた時には少し迷ったもの」
「……あんた、オレが所属してるって知ってたのか?」
「ええ。良くも悪くもユーリ・ローウェルの名前は帝都でとても有名だったもの。元騎士で下町の用心棒、そして新星の如く現れた世界を旅するギルド凛々の明星の黒衣の剣士、って」
「良くも悪くも、ね」
 自嘲気味に呟いて視線を空に向けたユーリに、カタリナは言った。
「少し興味があったの。今の貴方は、どんな顔をしているのかしら、ってね」
「その様子じゃ、予想の範囲内って?」
「どうかしら。そうでもあるけれど、そうでもないわね」
 謎かけのような返事に、青年は片眉を上げる。視線を向けてみれば、女性は悪戯っぽい笑みを浮かべてユーリを見ている。
「いつか私、言ったことがあるわね。貴方が自分から誰かを抱きたいと思う人って、どんな人なのかしら、って」
「…………ああ」
「私は、見つけた。そんなことを思う日が来るなんて思ってもみなかったけれど。何もかも知って、それでも抱き締めてくれた人を。そして奇跡のようにこの子を授かった」
 奇跡のように。カタリナが昔ユーリに問いかけたその時に聞いた話は憶えていた。だからこそその一言が大げさなものではない、彼女にとっては奇跡でしか無いのだと思った彼は、ただ頷いた。
「貴方もそうでしょう? でも、迷ってる」
「だから、そうでもあるけれど、そうでもない、か?」
「違って?」
 確信している、自信に満ちた問いかけ。
 ユーリはそれに答えず、彼女に背を向けてただ肩を竦めた。そして視線を落として見つめる左手。
 手の平を見つめて、握り締めて。
 そんな行動をした青年に、問いかけた女性はこの時に答えを得ることを諦め、肩に掛けたストールを胸の前で合わせた。
「あまり体を冷やすのは良くないし、先に戻らせてもらうわね。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
 背を向けたまま言うと、遠ざかって行った足音が止まり、扉の開閉の音の向こうに消えた。
 そして少し。
「趣味悪ぃぞ、おっさん」
「やっぱ気付いてた?」
 暗がりから出てきた飄々とした男は、しかしいつもよりも疲れた様子をひしひしと漂わせている。
「だってぇ、ようやくカウフマン女史のお許しが出て戻ってきてみれば、宿の前で話してるんだもの。おっさん疲れてるから散歩って気分じゃなかったし」
「はいはい、悪かったですよ」
「……実際気を付けた方が良いと思うわよ。女の子ってのは鋭いし。夜中に二人きりでお話、なんて誤解され易いシュチュエーションそのものじゃないのよ。嬢ちゃんなんか、絶対悪い方に考えると思うし。ていうか、もう悪い方に考えてるかもね」
 レイヴンのその言葉に、ユーリは眉根を寄せた。
「青年が覚悟して全部説明するなら別だけど、そういうつもりが無いなら誤解されるような雰囲気作っちゃダメよ」
「おっさん、あんた」
「そういう場所にはね、まあおっさんにもそれなりにアテがあったって言うか。騎士団の連中は、よっぽど真面目じゃない限り一度は縁がある場所でしょ。娼館は」
 騎士団の連中が良く使う場所はある程度絞れるし、であの子のこと見かけたことあるんだよね。そう続けたレイヴンに、ユーリは小さく吐息を漏らす。
「気ぃ付ける。そんでいいか?」
「投げ槍な返事ねぇ。彼女に図星を指されて思う所があるのは分かるけど。……迷うのも程々にしないとね」
 んじゃおっさんもう寝るわ。背を丸めて宿に入ったレイヴンの姿が扉の向こうに消えると、ユーリは吐き出すように呟いた。
「程々に出来るなら、苦労してないっての」


Back 【2】 / True Love? / Next 【4】
ユーリとオリキャラのカタリナとおっさんのターン。ユリエス前提の話なのですが、今回エステルの出番は描写のみ。次はちゃんと出番ありますですよー。五話くらいまで延びます。こうなったらちゃんと旅程通りに辿って行かないと、ということで次はユウマンジュ〜ナム孤島くらいでしょうか。
[脱稿:09'1.24 掲載:09'1.28]


* Close