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78.屋上

【DLC「学園編」で学園パラレル/ユリエス/掌編】



 四時限目が終了した、それを知らせるチャイムが高らかに響いた。
 うららかな春の陽気。
 陽に当たり続けていればさすがに暑くなってくるものの、時折そよぐ風は鬱陶しく無い程度の涼をもたらしてくれる。もうあと二週間も経てば、梅雨の季節に近づく影響で段々と不快なじめじめに悩まされるようになるのだろうが、今はその気配は無い。
(今が一番良い時期、だな)
 今年は四月に入ってからも寒暖の差が激しく、何十年かぶりに春にみぞれまで降る、という日まであった。それは四月の下旬に入ってからも収まることは無かったが、GWしょっぱなにある平日の今日は、それまでが嘘のように春らしい――ともすれば初夏の陽気と言っても良い気温である。
 さて、と彼は耳が拾い上げた音に気づいてくるりと振り向いた。
 ぱたぱたと軽い足取りだと分かるその足音の持ち主が彼の待ち人だ。
 あと五歩、四歩、三歩、二歩、一歩――。
 ギィ、と金属が軋むような音を立てて屋上に出る唯一の扉が開く。
「ユーリ先輩!?」
「よ、遅かったな、エステル」
「……今日こそはわたしの方が早いと思ったのに。先輩、早過ぎます! 第一、まだチャイムが鳴って何分も経ってないです」
 小さく眉根を寄せて、心なしか疑惑の視線を向ける少女に、青年――ユーリはひょいと肩を竦めた。
「今日の四限は自習だったの」
「本当です?」
「何だったら後でフレンに聞いても良いぜ? おっさんが他のクラスに迷惑かけないなら、教室に居なくて良いっつーから、ぶらぶらしてたの」
「そ、そうなんです?」
「まあ、少しは思う所もあって進路指導室に顔出してからだけど」
 悪いことしてないのに疑うなんてなー、とユーリはエステルから顔を背けながら言う。
「あの、ごめんなさいユーリ先輩」
 沈んだ声に、ちらりと視線を向けた青年は沈痛な面もちで俯いている少女を見つけて苦笑を零す。
「……GWのどっか、空いてる?」
「はい?」
「スイーツ博覧会、ってのがやってるんだけど、男一人じゃさすがに行き難いと思ってたんだよな」
 ユーリの言葉に、彼の言いたいことに気づいたのか、少女は顔を上げてパッと笑顔になった。
「空いてますっ!」
「よし、さっきのは水に流す。んじゃ、先に昼メシ食って、いつにするか決めるとしようぜ」
「はい、ユーリ先輩」
「ああ、もう一つ」
「はい?」
「出かける時は、先輩はナシな」
「え……?」
「ほら、メシ食うぞ」
 昇降口の日陰になる場所へと歩きだしたユーリに、エステルは口の中で小さく青年の名を紡いでから彼の後を追って歩き出した。


*4月以来の365題をストックから。お題で学園パラレルは初めてです。ちなみに書いたのが5月終わり頃なので、そういう季節感で書いてます。