【本編中/第三部終盤/パーティメンバーほのぼの/掌編】
「おめでとうございます、特賞です!!」
カランカラン、と威勢良く鐘が鳴り響く。係の上げたその声とその鐘の音に、周囲を行き交う人や順番待ちしていた人々からも拍手が上がる。
「あら、当たったの?」
「本人は物凄くあっさりね。ていうかどれだけ引きが強いのよ」
呆れたように漏らした連れの少女に、もう一人の少女が笑顔で言った。
「でも凄いです。特賞ってなんでしょう?」
「うん。気になるね。ガルドかな? それとも凄い武器とか?」
「特賞ねぇ……、ガルドでは無かったような気がするけど」
さっきポスターで見たような、と首を捻りながら青年が呟くと、それを聞いていた男が頷いた。
「この福引って毎年やってるけど今までガルドが賞品になったことは無いのよね。ただ、その分賞品は良いもんばっかだけど」
「特賞は、あの幻の温泉郷ユウマンジュのカップル貸切権です! おめでとうございます!!」
男の言葉に続くように係が賞品の内容を叫ぶと、一行の誰もがえ、と特賞を当てた彼女に渡された目録を見つめる。
そこには確かに「温泉郷ユウマンジュ・カップル貸切権」と黒々とした文字が記されていた。
「ユウマンジュ……、そうだよね、確かに一般の人にとっては幻の温泉郷なんだよね」
「バイト先の一つみたいな感覚なんだけど」
「そうですね。お客というより、お手伝いをしたからか身近に感じます」
「それにオレ達出入り自由だし」
「えー、いいじゃないの、カップル貸切よ? おっさん立候補しちゃう!」
「あら、それならそうするわ。おじさま、一緒に行ってくださる?」
にっこりと微笑しながら言った女性に、男は瞳を瞬いて再度問い掛ける。
「えーと、本当にいいの?」
「ええ。私は構わないわ」
「イエー!!! 雨が降ろうと槍が降ろうとお供するから!!」
雄叫びを上げ、あまつさえ飛び上がって喜んだ男の姿に、女性を除いた一行の視線は生温かったり冷たかったり。しかしそれも、直後に驚愕のそれへと変わる。
「あ」
誰のものか――恐らく目撃していた全員――の声の後、ついさっき喜びに飛び上がっていた男は小さな段差に踵を滑らせ、腰から倒れ込んだ。
優秀な治癒術師である少女によって治癒術がかけられたものの、それでも打ち身に関してはその衝撃が強いほどしぶとく痛みは残るらしく、折角の休息日は安静にすることで費やされ、しかし期限が切れては勿体無いからと特賞は旅の最中に知り合ったある一組のカップルに贈られることとなった、とか。
*どうしてもおっさんしか浮かばなかったので、どんな状態でこんな雄叫び上げるかなー、とそこから浮かんだ捏造ネタ。最終的に贈られたカップルは移動宿屋のあの二人です。


