【ED後/「waltz.」設定・未来/ユリエス&息子&カロル/掌編】
※この話はユーリとエステルの結婚から数年後のお話であり、かつ二人のお子様達というオリジナル設定のキャラクターも登場します。それでも宜しければ折りたたみの中(携帯の方はこの下)をご覧下さいませ。
※兄:アルクトゥス・ローウェル[Arctus](アルカ)6歳、妹:スフィアリカ・ローウェル[Sphiarica](フィア)3歳。当然二人の存在も名前も設定も捏造ですので、ご了承の上、ご覧くださいませ。
少年は朝から困惑していた。
いつも内心でもう少し控え目にしてくれないかな、と思っているくらいに仲の良い両親が、朝から険悪な雰囲気なのだ。
「おはよう御座います、お父さん、お母さん」
しかしそれでも挨拶はすべきだろう、と朝の挨拶をすれば、互いを見ないようにしていた両親は少年に視線を合わせて口を開いた。
「おはよう、アルカ」
「おはようございます、アルカ」
同時に返って来た言葉はいつものことだったが、その後の反応はと言えば――。
再び視線を逸らす有様だった。
「おはようアルカ、ユーリ、エステル! ……って、どうしたの?」
「おはようございます、カロル兄さん。その……」
昨日、客人として泊まっていた茶髪の青年は少年の両親の古くからの仲間であり、父の所属するギルドの若き首領である。彼のギルド首領最年少就任記録は今でも破られていない。
その青年に背後から声を掛けられた少年――アルカは困惑も顕わに彼を振り仰いだ。
「ユーリ、エステル……何やったの?」
「別に。ただエステルが拗ねてるだけ」
「違います。これは喧嘩! です!」
憤然とした様子で言い返したエステルが続けた原因は、以下の通りである。
朝食のデザートに出そうと思っていたヨーグルトに添えるつもりだったジャムを、全部紅茶に入れてしまったこと。ちなみに量はローウェル一家と客人であるカロルの分を考慮しても十分なほどにはあったとか。そして更には、昼食後に作ろうと思っていた菓子に使う予定だった果物を食べられてしまったこと。一つだけでなく、同じものが二つあったのを、二つともらしい。
それを聞いたカロルは、肩を落としながら呆れたように溜息を吐く。
「……ユーリ、甘いもの好きは分かるけど、朝から食べ過ぎだよ。ジャムって……、昨日ボクがお茶の時間に見た時は結構残ってたし、果物も……。ボクはエステルが怒るのも無理ないと思うけど。でも、エステルもユーリの甘いもの好きは十分過ぎるくらい知ってるんだし、予防しとくとか、事前に言っておくとか。……どっちにしろ、大人気ない話だと思うけどね」
「けどそれならな……」
「でもやっぱり……」
不満そうに口を開いた二人を止めたのは、黒髪に新緑色の瞳を持つ彼等の息子だった。
「喧嘩するほど仲が良い、と以前、リタ姉さんとレイヴンおじさんのことをジュディ姉さんが言ってたことがありますけど、確かにそうみたいですね」
でも、と少年は両親それぞれに視線を合わせてから続ける。
「フィアが怖がりますから、あの子が起きてくるまでに仲直りして下さいね」
にこりと微笑しながら言った少年に、両親は思わず顔を見合わせ、ゆっくりと頷いた。
「良かった。じゃあ、僕はフィアを起こして来ます」
少年が出て行った後、彼を見送ってからカロルがしみじみと呟く。
「……どちらに、ってわけじゃなくて……、でもやっぱり二人の子供だよね、ほんと」
強制していないけれど納得させちゃう雰囲気とか、こうと決めた大事なことは譲らない所とか。
続けられた感想に、それまで「喧嘩」をしていた少年の両親も苦笑しながら同意する。
勿論、少年の妹が起きて来た頃には険悪な様子は欠片もなかったという……。
花の街ハルルのローウェル家における、客人を交えたある朝の一コマである。
*実はハロウィン企画話で出たり、オフ本のおまけ本で出たりとしていたお子様達ではありますが、名前が出たのは初めてだったりします。


