美容歯科 税理士 求人 day

記事一覧

48.拒絶

【本編中/第三部終盤/パーティメンバー/コメディ/超掌編】

「イヤだ」
「どうしてです?」
「そうよ。折角貰ったのよ」
「物は活用してこその存在価値よね」
「イヤだったらイヤだ」
 黒髪の青年と彼を囲う三人の女性。
「傍から見れば羨ましいんだけどねぇ」
「じゃあユーリと変わってみる?」
「んー……、変わってみたいけど、変わりたくないような。究極の二択かもね」
「……何かユーリが子供みたいに見えるよ」
「ワフ」
 中年のおっさんと成長期の少年、そして青毛の犬が遠巻きにしながら眺めていた。
「宣伝の為です!」
「そうね、宣伝の為よ」
「ほら、覚悟する」
「誰がこんなのつけるかっつーの!! オレは絶対イヤだからな!」
 力いっぱいの拒絶の言葉が響いた、その数時間後、世界のどこかにある街で、白が二人と赤が一人のうさみみを着けた女性達と、影を背負って虚ろな目で彼女等に囲まれる黒いうさみみを着けた黒髪の青年という、世にも珍しいパーティが見かけられた、らしい。
 なお、残りのメンバーは触らぬ神に……とばかりに、待機メンバーとして心行くまで宿で休んでいたとか。


*シリアスにも取れるのに敢えてコメディに走るのは、拒絶と見て真っ先に思い浮かんだのがあのアタッチメントのコメントだからです。

47.コンプレックス

【ED後/原作ベース/ユーリ&カロル/掌編】


「だぁ~っ!!」
「っと、中々良いけど脇が甘いぜっ!」
 受け止めた一撃を鮮やかに受け流し、素早く身を翻し少年の脇腹に剣の切っ先を突きつけた青年は、少しの間を置いて剣を引いた。
「はぁ……やっぱダメかぁ」
「まあ、得物の違いもあるだろ。武醒魔導器の無い今、それだけ動けりゃ充分じゃねぇの?」
「分かってるんだよ。魔導器の無い今、あの頃とは違うって言うのは。それでも……、ユーリだって同じ条件のはずなのに相変わらず敵わない」
 大きな溜息を吐いて、ハンマーを下ろしたカロル。ユーリは剣の腹を肩に乗せるようにすると、小さく肩を竦める。
「言ったろ、得物の違いもあるって。カロル先生のはハンマー。オレのは剣。ハンマーはその重さを攻撃に乗せて威力を増してるけど、剣は刃と振りの早さが勝負だ」
「……うん」
「ちゃかさずに言うけど、さっきの一撃、並の剣ならぽっきり折れてたぞ。折れなかったのはこいつが最後の剣士って銘ある業物だからで、それにしたって易々と弾き返せずに受け流すことにしたんだし」
 ちゃかさずに、と前置きしてから続けられたユーリの言葉にカロルは瞳を瞬いた。
「それ、本当?」
「言ったろ、ちゃかさずにって」
「うん、でも……、ユーリがそんな風に思ってくれたって言うのが意外で」
「そう?」
「ボクにとっては、凄く大きくて高い壁みたいな存在でもあるんだ。それに大人って、子供に対しては『大人の顔』向けて本当のことって中々言ってくれないでしょ。特にこういうこととか」
 幼い頃から大人達に囲まれていたからなのだろう、それが分かるカロルの言葉にユーリは言う。
「分からなくもねぇけどな。オレの場合、その壁はオレより大人でも子供でもなかったんでね」
「ユーリより大人でも子供でも……?」
「ある意味コンプレックスだな、今思えば」
「……フレン?」
 少年の問い掛けに、青年は少しだけ唇を歪めてみせた。
 幼い頃いつも共に居て、剣も同じ一本を共に使っていた二人。切磋琢磨しながら腕を上げていったが、しかし勝負ごとではいつも金の髪の少年が勝っていたのだと、いつか語った青年。
「近すぎる壁も、大変なんだね」
「そういうこった」
 近すぎて余計に高く見えて、二人が離れて互いの道を見つけるまで本当の高さが見えなかった。
「カロル先生は成長期の真っ最中なんだし、体格が追いつけばオレを負かす日も遠く無いんじゃないの」
「とか言いつつ、絶対負ける気無いでしょ」
「はっはー、さすがカロル先生は敏いな。オレにもオレの思う所があるし、簡単に負けてなんかやんないっての」
「……はあ。やっぱりユーリはユーリだよ」
 溜息を吐いてそう零せば、言われた青年は愉快そうに笑って言った。
「褒め言葉ありがとよ」


*がんばりやさんなカロルと、そんな少年が少しまぶしいユーリの図。

46.キズナ

【ED後/「waltz.」設定・未来/ユリエス掌編】


「あ、ユーリ見てください。フレンから手紙です」
「フレンから? 珍しい……、って言うか分厚くない、これ?」
 エステルから受け取った手紙は比喩では無くずっしりとした重みを感じるもので、それに比例して厚みもある。ユーリは一体何事だと片眉を上げつつも、封を開いた。
 便箋を取り出すと予想以上の枚数だったが、取りあえず一枚目に目を通し始める青年。
「……ああ、そういうこと」
「どういうことです? 何か大変なことがあったんでしょうか……」
 眉尻を下げ、不安をありありと滲ませる彼女に、ユーリは違うと笑いながら一枚目の便箋を手渡した。
 それを受け取って青年と同じように目を通したエステルは、彼の言った意味が分かって不安を払拭した顔で見上げて言う。
「下町の皆からのお手紙なんですね」
「そうみたいだな。ギルドと帝国の協力で昔より郵便制度も整備されたし、手間賃も大分安くなったとは言え、下町の奴らがそう頻繁に利用出来るほどじゃないし」
「それでフレンが皆さんのお手紙を代表して送ってくれた、ということです?」
「そう。ちょくちょく立ち寄ったりしてたとは言え、オレにしてみりゃ新天地での生活だし、気ままな一人暮らしとは違うし、帝都方面の仕事も無かったからしばらく立ち寄ってないし」
 どうやら二枚目はハンクスからのものだったらしい。そこに書かれた小言雑じりの文を読んだユーリは、要約するとこうだ、と言った。
「嫁さん見せに来い、だと」
「え、ええと、わたしです?」
「オレはあんた以外の嫁さんを持った憶えは無いけど?」
「分かってますけど、やっぱり下町の皆さんに式の前にご挨拶しなかったからでしょうか……」
「別に怒ってるわけじゃねぇって。ほら、カロル先生が写真撮っただろ、式の」
 ユーリの問い掛けに、エステルは頷く。
「はい。この間、届けてくれたものです?」
「そう、それ。で、天然陛下とフレンにも届けに行った。そのフレンが休暇で下町行った時にその写真をハンクス爺さんに見せた、必然的に他の奴らも見た、だからちゃんと見せに来いってこと」
 二枚目を彼女に渡し、三枚目を見るとやっぱりだと青年は肩を竦めた。
「この分だと他のもそうだな。……なんだ、下町の奴ら以外のも混じって……、アグエロン?」
「確か……、ユーリが騎士団に所属していた頃の同期の?」
「ああ。あいつフレン隊に所属してるし。……ってアシェットの奴もか!」
 フレンの奴、わざわざ声掛けて集めてるんじゃないだろうな。ぼやくように呟きつつも、便箋に書かれた文字をしっかり目で追っているユーリに、エステルはくすりと笑った。
「いいじゃないですか。一概に言えないですけど、これだけ沢山の絆がユーリに繋がっているんですよ」
「キズナ……、絆、か」
「今度カロル達が来たら、帝都に行きましょうね、ユーリ」
「ああ。……見せろってんだから、大いに見せびらかして良いってことだし」
 に、と笑ったユーリの言葉に、エステルはほんのり頬を染めて小さく彼を窘めるのだった。

*「35.欠片」の前のような、新婚ユリエス。

45.残った物

【ED後/EDロール最後の場面/某銀髪の英雄視点/シリアス/掌編】

 ふと思い出すことがあった。
 どうしようもなく、人の光と影が目に晒されたあの月日を。
 今でもこれで良かったのか、そんな自問を繰り返す男は決まってある場所を訪れる。
 かつて魔導士達が集った街の、その跡に落ちた、傾いだ古代都市の成れの果てを一望出来る台地。そこに存在する、人の立ち寄らない森を抜けた場所にある切り立った崖から眺めるのだ。
 空を、大地を、生きる命を、そして人が生み出した兵器であり新しい時代の始まりを迎えた今は亡き都市を。
 今はもう、結界という守護であり籠であった偽りの空は無く、青い空の向こうに黒き災厄が蠢いていることもない。災厄――いや、哀しきものたちは、今は「精霊」としてこの世界に還り、存在しているのだから。
 男は腕を伝い遊んでいた栗鼠が離れる気配に視線を上げると、しっかりとその光景を目に映した。
 そして、頭上を通り過ぎた影。
 世界でもっとも高い山がある山脈――アステフィルス環状連峰すら悠々と通り過ぎて行く、地上の「凛々の明星」たる者達の乗る船とそれを運ぶ始祖の隷長。
 吹き抜けた風に、かつての協力者であり今はこの世界に風を紡ぐ者となった彼の者の声を聞いた気がして、男は口元を僅かに持ち上げた。
 かつて世界を壊しかけたヒト。そしてそれを忘却し驕ったヒト。己以外の生命に傲慢なヒト。
 だが、だからこそ、その濃い影と共に驚くべき光すら持つのだ、ヒトとは。
 全てが在るからこその「世界」。
 亡き親友が願ったであろう未来が、もしかしたらこの先にあるのかもしれない。
 自問の後に男の胸に確かに残った物――未来への希望。
「今は、この世界を見守るだけだ」
 呟きは風にさらわれ、世界に溶けるように消えた。

*実験場の名目を果たす為に、普段絶対書かないキャラに挑戦してみる。というわけで、EDロールの最後の某場面をイメージして。

44.友達

【ED後/Other tales「Kiss 2.額の上なら友情の」の後日/微フレジュディ/掌編】

「こんにちは、ジュディス」
「あら、こんにちは、フレン」
 下町のユーリが下宿としている宿屋の隣にあるちょっとしたスペース。そこで愛用の槍を手に一通りの型をさらっていたジュディスは、一息吐いた所で声を掛けられてその意外な人物に瞳を瞬いた後、挨拶を返した。
 金の髪の青年は、見慣れた騎士団服を纏っているから、休みというわけではないのだろう。
「騎士団長自ら巡回?」
「いや、少しまとまった休憩を取らされてね。今、ユーリ達が帝都に来ていることはエステリーゼ様から伺って知っていたから、顔を見に来たんだけれど……、居ないようだね」
「ええ。あなたが話を聞いたそのエステルと、市民街の市場で不足品の買出しという名目のデート中、よ」
 うふふ、と楽しそうに笑みながら言ったクリティアの女性に、フレンはどう反応を返していいか僅かに困惑した笑みを浮かべた。
「ちなみに我が首領とラピードは下町でお手伝い中。リタはエステルの紹介でお城の図書館に篭っていて、あなたの所の優秀な隊長首席のおじさまは溜まったお仕事を片付けているんじゃないかしら」
「そう、か。どうやら間が悪かったようだ」
「そうね。あなた要領良くても、巡り合わせの運にはあまり恵まれてないみたいだもの」
 ユーリやエステルから色々聞いているわ、そう付け加えた彼女に、フレンは今度は苦笑を隠さずに言う。
「そうかもしれない。でも、仕事じゃない時に続けて二度会った君とはめぐり合わせの運は少しはあるみたいだ」
「あら、確かにそうね」
 くすり、笑ったジュディスはフレンの出で立ちを改めて見つめた後、言った。
「折角の休憩中なのに、お誘いしたら迷惑かしら?」
 微笑しつつ愛用の槍を一振りして言った彼女に、青年は軽く首を横に振る。
「いや。最近はデスクワークが多いから、むしろ喜んで。それに、君ほどの使い手を相手に出来るのだから、ジュディス」
「ユーリから何を聞いているのかしら? でも、私も楽しみよ。闘技場での貴方とユーリの戦いは見ていてうずうずしたもの」
「何て言うか、類は友を呼ぶというのはこういうことを言うのかな」
「あら。それを言うなら貴方も十分当てはまると思うわ。ユーリの幼馴染兼親友で、私の友達でもあるのだから」
「友達?」
「ええ。違って?」
「……いや。今の所は少し物騒な付き合いの友達だけど」
 そうしてさすがに街中では危ないからと、下町を出た場所で対峙した二人は、フレンが休憩時間の終わりを思い出して慌てて辞去するまで、ひたすらに武器を交えていたとか。

*お題を始めた時に、思うままに書こうと思っていた中にあったフレン×ジュディスですが、40題も半ばでようやく。サイトのキスのお題の話の更に後日の設定で。

43.青春。

【現代パラレル「毎日がSpecialday」設定/ユーリ22歳・レイヴン36歳/掌編】

「青春。いいねぇ、若いって」
「何だよ突然。おっさん臭い」
「えぇっ、酷い青年! おっさんまだ加齢臭はしないわよ!?」
「そういう意味じゃねえっての」
 溜息を漏らしながらも手は止まらないユーリに、レイヴンも軽い調子で分かってるわよ、と返してコーヒーカップを手にした。
 舌を通り過ぎ、喉へ落ちていくスッキリとした苦味をひとしきり味わった後、男はカップを置きながら言う。
「いやね、来る途中に公園があるじゃない?」
「……ああ、そういやあったな。最近出来たマンションの横だっけか」
「そこでね、学生さんが待ち合わせて登校してくのを見たわけよ。前は夕方くらいにいかにも告白じゃない、ってのを見かけたし」
 言って、再び若いっていいねぇ、と呟いた男に店主である青年は半眼を向けた。
「…………おっさん、覗き見も大概にしとけよ」
「覗き見なんてしてないってば。偶然、そういう所に行き当たっただけ! おっさんそういう巡り合わせって言うの? 運に恵まれてるんだよねぇ。……青年と嬢ちゃんの時みたいに」
 にんまりと笑う男に、青年は嫌そうに溜息を漏らす。
「何で知り合っちまったんだかな」
「ん? しゃーないっしょ。まだ青年がいたいけな少年の頃に知り合った時から縁が出来たんだし。一度出来た縁って言うのは、中々切れないもんなのよ」
「もし過去に戻れたら、オレはオレに忠告する。未来で後悔するぞ、ってな」
 はあ。溜息を吐きながら、手際よく準備していたトーストとサラダを男の前に出した青年は、開店準備があるからとカウンターを離れていった。
「おっさんは、青年が言うほど嫌がってないってこと知ってるから良いけどねー」
 だからこそ今この時があるということを、彼はちゃんと分かっていると、男は言われないまでも分かっていたから。

*おっさんは開店前にモーニングサービスをねだりに来てるのです。何故開店前かは準備も落ち着いて甘い匂いも少ない時間だから。そして何気に二人の出会いについて触れてますが、ユーリが嫌そうにしているのは大きな理由があったりします。いずれ本編で。

42.OOさま

【ED後/パーティメンバー/微コメディ/掌編】

※OO=「凛々の明星」とします。

 ある日、世界を巡っていた「凛々の明星」とそれについていく一行は休養と補給を兼ねて、立ち寄ったマンタイクの宿屋で一通の手紙を受け取っていた。
「凛々の明星さま、って。ボクたちしかいないけど……」
「で、誰からなんだ、首領」
 ユーリの問いに、宿の主人から渡された封筒を裏返したカロルは差出人の署名を見て目を瞠る。
「これ、『戦士の殿堂』からだ……しかもナッツの署名入り」
 ほら、とその署名を見せるように封筒を掲げて見せた少年に、ジュディスが確かにと頷きながら言った。
「取りあえず、先に部屋へ行きましょう?」
「そうですね。立ち寄るかも分からないのに手紙を預けていたんですから、きっと大事な話なんですよ」
 ジュディスの言葉にエステルも同意しながらカロルを促すと、少年は素直に頷いて宿の主人に礼を言って手配した部屋の方へと向かった。
 あの旅の頃からマンタイクに滞在する際に利用していた宿。「いつもの」と言っても過言では無いお馴染みの部屋に荷物を置くと、少年は皆に促されるままに手紙の封を解き、丁寧に便箋を開いて読み上げ始めた。
「えっと……、『突然で驚いたことだろう。いつも世界を飛び回る君達の手に、出来るだけ早く届くよう、主要な街の宿に同じ手紙を預けている。長らく統領代行として立っていたが、この度正式に就任することとなった。就任の披露目として闘技場で名立たるギルドを集めた記念大会を開催することになったが、ついては是非「凛々の明星」にも参加して欲しく思う。前統領を看取った君達に、是非』……」
 そして続けられた日時は、明後日のもの。
「へぇ。いつになるかと思ってたけど、ようやく決意したってわけね」
「レイヴンは知ってたの?」
「薄々ね。ユニオンと『戦士の殿堂』はあれ以来、定期的に会合してたし。前統領が偉大だったからこそ、周囲が押し上げるより本人が確固たる決意を持たなきゃ駄目だなーとは、おっさんもカウフマン女史も同じ見解だったわけ」
「これギルド宛てってことは、正式な構成員じゃないあたしは参加資格無しってこと?」
 カロルの持つ便箋を覗き込みながら不満げに言ったリタに、エステルは困ったように笑みながらそうでしょうねと頷いた。
「カロル、ユーリ、ジュディス、ラピード。正式に参加出来るのは彼らだけ、ですね」
「おっさんも『天を射る矢』に所属してるってことになってるし。残念だわ」
「で、首領。勿論参加するよな?」
「ね、首領。勿論参加するわよね?」
「ワフ、バウワウ!」
 やる気満々の二人と一匹の声に、年若きギルドの首領たる少年はしっかりと頷いた。
「ナッツには色々お世話になったし、折角招待されたんだもん、勿論だよ! 明日朝、ノードポリカに向けて『凛々の明星』、出発だ!」
「了解」
「ふふ、了解」
「ワン!」
 はりきる二人と一匹をよそに、魔導少女はどうにかして参加出来ないかと呟きながら目論んでいて、その友人である少女は皆が大きなケガをしないように心配しつつ応援する気いっぱいで、最年長の男は若いっていいわねぇといつもの様子で彼らを眺めていた。
 その明朝、マンタイクを出立した一行は、同日中に同じデズエール大陸東端ザドラク半島の闘技場都市ノードポリカに到着。その翌日に開催された新統領就任お披露目と記念大会に参加した。なお、その記念大会において飛び入りがあったりが、その飛び入りがネコ耳でゴーグルをつけたウェイトレスと、エステティシャンと、カゴを被った男であったことは、記録に残っていない観客と参加者のみが知る事実だったりする。

*勿論大会のこととかは捏造設定ですよ。

41.変。

【本編中/第三部終盤/パーティメンバー/コメディ/掌編】

「……ユーリ」
「頼むから何も言ってくれるな、カロル先生」
「変。違和感たっぷり」
「リタ……」
 疲れた様子を隠さない青年に口を噤んだ少年に代わって、バッサリと切り捨てた魔導少女に、友である少女が苦笑した。
「確かあの時の選択肢の一つだったわね」
「あの時って、何かあったの?」
 その時に居なかったレイヴンとリタがジュディスの言葉に不思議そうな顔になる。
「ヘリオードの騎士団本部に潜入する時に、ね」
「ボクが騎士の変装なんて無理があるでしょ? なのにユーリはボクにやれって言うし。リタには魔法放たれるし」
 散々だったよ、もう。カロルが盛大な溜息と共にそう締めると、ジュディスは微笑を深めた。
「でも、ある意味正解だったのかもしれないわ」
 うふふ、と笑ってユーリに視線を移した彼女に、本人は視線を逸らしながら呟く。
「分かってるっての。ていうかジュディ、そう思ってんなら何で罰ゲームの指名がこれなんだよ!」
 これ、と自らの着ている騎士見習いの服を示したユーリ。
 暇つぶしにと始めたカードゲームは、お遊びからいつしか真剣なものへと変わり、敗者に罰ゲームが科せられるものまでになった。勝者が何をするか選べるその罰ゲームに於いて、勝者ジュディスがユーリに言ったのは、オルニオンで出会ったエステルの剣の師から渡された「騎士見習いの服」を着ること、だった。
「……だから嫌だったんだ」
 これならフレンから押し付けられた聖騎士の服を着る方がどれだけマシだったことか。
 過去、容赦なく幼馴染に笑われた記憶が脳裏を過ぎり、心底嫌そうに呟いたユーリ。その様子に、ヘリオードでの鬱憤がちょっと晴れた気がしたカロルは小さく笑い、エステルは困ったように笑むのだった。

*意図せずして拍手SSの関連のような話になったのですが、これも一つのパターンということで。

40.テレビジョン

【現代パラレル「毎日がSpecialday」設定/ユーリ22歳・エステル19歳/超掌編】


「エステル、悪い、チャンネル変えて良い?」
「はい。構いませんよ」
 ユーリが来るまで何となく見ていただけですから、言ってエステルは手に持っていたリモコンを現れた青年に渡した。
 短く礼を言った彼は、時計を確認してからチャンネルを変える。
「よし、間に合ったか」
「料理番組、です?」
 パッと変わった画面には、エステルでも知っている有名な料理番組のタイトルが映り、おなじみのテーマ曲が流れ出す。
「そう。オレのレパートリーって言えば、大人数でも作り易い料理とかお子様向けのもん、後は酒のつまみになりそうなのに偏ってたから、こういうので新しいのを仕入れてるってわけ」
 お、今日の料理はミーゴレンか、と呟きながら画面に表示された材料の一覧を真剣に見つめるユーリ。
「おいしそうです」
「だな。調味料はさすがに無いが、材料はすぐに揃いそうなもんばっかだし……、今度あんたが来る時の夕飯はこれにするか」
「ほんとです? それじゃあ、お買い物一緒に行きましょうね」
「はいよ。なら、帰ったら次の候補、メールしろよ」
「はい、ユーリ!」

*ある日の何気ない夕飯前の風景、ということで。

39.ドラッグ

【本編中/第三部終盤/追憶の迷い路/パーティメンバー/掌編】


「凄い、花も再現されてます」
「本当だ。どうせだし、此処で休んで行こうよ」
 一定の距離を進む度に唐突に変わる景色。世にも不思議なその迷宮をそれなりに順調に進んでいた一行は、今、現実ではクオイの森に当たるのであろう場所の花園を見つけていた。
 エステルが感心したように呟いて、カロルがその隣で提案して一歩を踏み出そうとした時、
「ちょっと待った」
 と、普段の態度からは中々想像出来ない真剣な男の声が響いた。
「何だ、おっさん。何かあんの?」
「まあねぇ。悪趣味な小細工よ」
 はいはい、ちょっとごめんねー。と、エステルとカロルの間を割って歩を進めた男は花園の入口で立ち止まり、屈みこんで咲き誇る花をつと突く。ふわり、僅かに立ち上った花粉に、レイヴンは口元を手で覆ってから素早く後退る。
「やっぱねぇ。おっさんはある程度耐性あるし、青年とかジュディスちゃん……嬢ちゃんも辛うじて大丈夫かもだけど、少年とリタっちは厳しいわね」
「わたしは大丈夫で、リタとカロルは駄目なんです?」
「それ、ドラッグね」
 不思議そうな表情で小首を傾げたエステルの隣に並び立った魔導少女は、男の言葉を聞いて眉根を寄せながら言った。
「さっすがリタっち。魔導器以外もお詳しいとはおっさん参っちゃう」
「折角天変地異並に珍しく真面目なんだからちゃかさない! 別に詳しいわけじゃないわよ。ただ、おっさんの行動と言葉で分かっただけ」
 天変地異並に珍しい、という言葉にショックを受けたようなレイヴンは放って置いて、いつもと同じ微笑を湛えながらジュディスが口を開く。
「おじさま、花粉を吸わないようにしていたわね。それに、騎士団隊長首席ともなればそちらの方面で知っているのだろうし、耐性もあっておかしくない」
「ボクとリタが駄目なのは…………体の大きさ、とか?」
 カロルが考え込んでからジュディスの言葉を継ぐと、ユーリが肩を竦めた。
「カロル先生ご名答。薬ってのは体の大きさで効き易い量も変わるし」
「だから、わたしは辛うじて、なんですね」
 納得したように頷くエステルに、レイヴンがそういうことと言った。
「リタっちが言ったのは半分正解。あの花の花粉、普通の状態でも強い幻覚作用を持ってる。その花粉を特殊な方法で精製することで、幻覚作用を持つドラッグになるってわけよ。そっちはほんの小指の先に付いたくらいで、大の大人が酩酊状態にも似た状態になっちゃうくらい」
 仲間の元に戻ってきた男は、花園を肩越しに振り向いて続ける。
「それに比べれば、あっちはまあ、少しくらくらするかなーくらい? 吸い過ぎたらそうも言ってられないけどね。ね、悪趣味な小細工でしょ」
「あのふざけた声の主が作り出している場所なら、有り得なくは無いな」
 忌々しげに男に同意した青年は、先へ進むべく仲間達を促した。男はちらりと背後を振り向いてから、一行の後を追ってその場を後にする。
 人気の無くなったその花園は、見た目だけは楽園の如く存在し――やがて始めから無かったのが当たり前のように、ぐにゃりと歪んで消えた。


*「20.ジャンプ」の後のようなお話。たまにはおっさんに花を持たせてみる。(持ってないけど)

ページ移動