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15.上を向いて

【ED後/友達以上恋人未満/掌編】

 上を向いてさっと視線をはしらせる。見上げた先は晴れ渡った青空なので、目に映るのは透き通るような青と、そこに浮かぶ雲の白。
 それ以外の色が無いことに、彼女は残念に思い、そしてそう思うまでに「日常」となっていたあの旅を懐かしむのだった。
 会えないことは解っていた。彼女が足りないと思った色の持ち主は、ギルドの仕事で仲間と共に帝都を出ているのだ。出発する前に、戻ってくるのは恐らく二ヶ月程先になるだろうと聞いていた。まだ、その二ヶ月まで半月もある。
 こんな時、自分がただの娘であったなら、と思ってしまう。そうすれば何の躊躇いも無く共に行く事が出来るのではないか、と。
 けれど同時に、もしそうだったなら、今此処で悩んでいる自分は居ないのだということも分かっている。皇族の姫である、エステリーゼ・シデス・ヒュラッセインであったからこそ、この気持ちを持つ自分が此処に居るのだ。
 それに、副帝となることを決めたのは彼女自身の意思だ。普通なら一生帝都から出ることも無かった立場の彼女が、旅を終えた後も世界を巡る権利を得たのは副帝として次期皇帝の目となり耳となる役があるからで、寧ろ渡りに船。だからこそ視察では無い時の仕事を疎かにするわけにはいかない。
 一つ吐息を漏らして首の角度はそのままに瞼を閉ざした少女。二ヶ月の間に埃が溜まってもなんだ、と彼からしてみれば冗談半分だったのかもしれない、鍵を渡されて、部屋の主が帰って来るまで半月もあるのについ足を向けてしまった。
「いけません、頑張りますって言ったのはわたしなのに」
 見送ったその日、帝都で自分にしか出来ない仕事を頑張るとそう宣言したのだ。
 どれくらいそうしていただろうか、しばらくそのまま佇んでいた少女はやがてぐっ、と軽く閉ざしただけの瞼に力を入れてから開いた。白く染まった視界。ぼんやりと、だがやがてやんわりと青を取り戻していく中、視界の端に捉えたその「色」に、一気に目を見開いた。
「っ……、ユー……!?」
「頑張り過ぎるな、って言わなかったっけ、オレ?」
「ど、……して。まだ……」
「半月もあるって?」
 言葉が出なかったのか、頷くことで返事をした少女に、今まで彼女に足りないと思われていた「色」を持つ青年は瞳を眇めて口元を持ち上げる。
「仕事、思った以上に早く終わって、最初はどうせならぶらぶらして帰るかと思ってた」
「……はい」
「でも何となく、フィエルティアから空見上げて。何か、足んないって思ったら……。戻ることしか浮かばなかったって言うか」
 で、戻って来た。
 開けた窓の外から聞こえてくる街の喧騒にすら掻き消されそうな小さな声で。
 告げた青年は、込み上げたものを堪えようと口元を手で抑えた少女を、己の腕の中へと引き寄せた。


*EDから2~3ヶ月以内くらい。シリーズ外で妄想してみた。