【芸能界パラレル「Act!」設定/撮影所にて/掌編】
※この話はMainの「Parallel world」にある芸能界パラレル「Act!」設定での掌編です。詳細はそちらの設定をご覧下さい。こんな特殊なパラレルでもオッケーという方は、折りたたみの中(携帯の方はこの下)をご覧下さいませ。
「ユーリはどう思います?」
「ん? 何が?」
撮影所の一画に設けられた休憩スペース。いつもは他の役者やスタッフも居る場所だが、偶々なのか今は主役の青年とヒロイン役の少女だけだった。
常備してある菓子を摘みつつ、先ほど渡されたばかりの次の場面の修正された台本に目を通していたユーリは、同じように台本読みをしていた少女の唐突な問い掛けに、紙面から顔を上げる。
「今、シーン52と53を読んでいたんです」
「……ああ、例の場面か。『ラゴウ』を討つ」
「はい。確かにカプワ・ノールでの話で出て来たように、『ラゴウ』の非道は許せないものだと思います。立場を利用して罪を軽くすることも。……それでも、法を犯しては……そうも思います」
難しい顔で自分の考えを述べたエステルに、青年は苦笑しつつ肩を竦めた。
「けど、この『テルカ・リュミレース』に存在する『帝国』が定めた法が、偏った平等なものじゃないなら? オレは『ユーリ』がそうする気持ちが分かるけど」
誰かがやらなければ、この先も非道が行われる可能性があるのなら。光ある未来を目指して歩き続ける、親友のその道を閉ざされる可能性があるのなら。
「どう考えても、オレの中の『ユーリ』は『ラゴウ』を許さない。あのまま何もしない所も想像がつかない。それが『テルカ・リュミレース』の『帝国』の定めた法を犯すことだとしても、あれがあの時の『ユーリ』の曲げられない正義だった。……オレはそう思ったな」
「正義、ですか」
「ああ。ほれ、この話のテーマ。『正義』を貫き通す、って」
「難しいです。少なくともわたしの『エステル』はまだ、迷いがいっぱいありますから」
ぱたり、台本を閉じて溜息を吐いた彼女の口にクッキーが押し付けられた。思わず唇を開くと、放り込まれる香ばしいそれ。反射的に口を閉ざして、そのままサクサクとした食感を味わいながら噛み砕き、飲み下すと、ユーリの声が掛けられる。
「いいんじゃない、迷ってても。それが『エステル』なんだし」
「そう、です?」
「まあ、これからが辛い所だろ。迷えるヒロインには苦難が待ち構えてる、ってのはこの手の話の常套だし」
「……おどかさないでください、ユーリ」
「さて、な」
最後に自分も、と青年がクッキーを己の口に放り込んだ直後、顔を出したスタッフが彼等に出番を告げる声を掛けた。
「さて、出番だ。行くか、『エステル』」
「はい。宜しくお願いしますね、『ユーリ』」
*本編中ではなく、パラレルでこの話を出すというのが捻くれている私らしいというか。画面がうるさいかもしれませんが、今回は話の中と現実のものを区別させる為に敢えて『』を多用しています。


