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66.雨の日

【現代パラレル「毎日がSpecialday」設定/ユーリ22歳・エステル19歳/梅雨時/掌編】


 今年の春にオープンしたばかりのパティスリー&カフェ「Vesper」には、不思議な決まりがあった。
「あら、ユーリ、雨よ」
 店頭の客が引き、カフェスペースに現れたジュディスが窓の外へと目を向けたままカウンター内に居るユーリに声を掛ける。
「あぁ……、こりゃ強くなるか? 悪い、エステル。少し抜ける」
「はい」
「カフェスペースは任せて。その代わり、戻って来る前に店頭の方をお願いね」
「はいよ」
 ユーリと入れ替わりでカウンター内に入ったジュディスは、背後の戸棚の中から販促用のPOPを取り出し、まず一つ目をカウンターの上に置いた。
 そしてカウンターから出た彼女は、カフェスペース内のテーブル席を回って、同じようにPOPを置いていく。
 その様子を眺めていたエステルは、今頃ユーリも同じようなこと――店頭へ傘立てを出し、ショーケースの上にPOPを置く――をしているのだろうな、と思った。
 そう間もなく作業を終えたユーリが戻って来ると、エステルは疑問に思っていたことを問いかける。
「ユーリ、聞いていいです?」
「ん?」
「どうして雨の日はサービスデイなんです?」
「ああ、これ」
 これ、とカウンター内に入ったユーリが置かれたPOPを示しながら言うと、エステルは頷く。POPには『Rainyday service』と傘のイラストと共に文字が目立つように配置されており、その下に更に詳しい内容が記されている。
 雨の日に来店し、ケーキセットを注文した場合には10パーセント割引。または、次回来店時に二つ目を注文する場合、500円以下のケーキを無料で引き換えられるカードの発行。
「雨になると客足が落ちるが、だからこそこういうことやって、雨の日は勿論、普通の日の集客率アップを狙ってるわけ」
「まだ知る人は少ないけれど、でもこれを知った方はそれなりに雨の日でも足を向けてくださるようになったわね」
 終わったわ、とカフェスペースの準備を終えたジュディスが戻って来ると、ドアベルが響いた。
「あら、早速ね」
「もう少ししたら交代する」
「いいわ。その代わり、カフェスペースはお願いするわね、オーナー?」
 くすり、笑って店頭へ向かった彼女を見送ると、ユーリは磨きかけのシルバーを手にする。
「さっき言ったの以外に、雨の日、ってのにも理由があるんだけどな」
「そうなんです?」
「そう。何だと思う?」
「……ええと、なん、でしょう?」
「分かったら次の新作の試作、出してやるよ」
「ええっ!? 分からなかったら……」
「当然おあずけ」
「ユーリ、意地悪です……」
 むぅ、と頬を膨らませながらも、新作の試作品は惜しいのか、眉根を寄せて一心に思案するエステル。
 その様子に口角を持ち上げた青年は、分かった時に少女がどんな顔をするのか楽しみだ、と喉の奥で小さく笑う。
 雨の日なのは、今に至るきっかけであった再会の日がそうだったから、なのだと。


*いつだったか、雨の日の仕事の帰りに雨の日割引をしているお店を見かけたことが元ネタ。

有言不実行……あああ、済みませんっ。

起きているうちは……の掟を適用してでも何とかしようかと思ったのですが、帰宅時間が遅くてちょっと無理、でした。
あああ、済みませんです……!(×100)

ど、土曜日は、土曜日こそは……!