【ED後/「waltz.」設定・未来/エステル&息子/掌編】
※この話はユーリとエステルの結婚から数年後のお話であり、かつ二人のお子様というオリジナル設定のキャラクターも登場します。それでも宜しければ折りたたみの中(携帯の方はこの下)をご覧下さいませ。
※長男:アルクトゥス・ローウェル[Arctus](アルカ)4歳
『前略、先日は贈り物を有難うございました。二度目のこととは言え、準備には時間が掛かりそうだと少し溜息を吐きたい心境でしたので、とても有難く、そして助かりました』
軽やかに紙面を走るペン先が綴るのは、心からの感謝を込めた礼。口元に微笑を浮かべながら言葉を記していく彼女に、その傍らで様子を見ていた少年は、不思議そうに問いかける。
「おかあさん、だれへのおてがみです?」
「下町の、箒星の女将さんです。テッドのお母様の」
「あ! このまえ、おとうさんがおくりものでもってきた、あかちゃんのふくやおしめをつくってくれたひと、です?」
「正解です。うふふ、アルカが生まれる前にも、同じように贈ってくださった方なんですよ」
にっこりと笑みながら言った母の言葉に、少年――アルクトゥス・ローウェル、通称アルカはぱちぱちと瞳を瞬いた。
「ぼくのときにも?」
「はい。女将さんだけじゃなくて、ハンクスおじいさんや、下町の他の皆さんや……。ヨーデル小父様とフレンもいっぱいの贈り物を下さったんですよ」
特にヨーデル小父様からの物は、いっぱいすぎて後で叱っちゃいました。
くすくすと楽しそうに笑うエステル。
「……ぼく、ヨーデルおじさまとフレンおじさまと、テッドおにいさんにしか会ったこと無いです」
少し寂しそうな呟きが聞こえて、笑い声が止まった。
「いつか、おとうさんとおかあさんのだいじなひとたちに、ぼくもあってみたいです」
「……そう、ですね。赤ちゃんが大きくなったら、一度、会いに行きましょう。ヨーデルやフレン、テッドは勿論、女将さんや、ハンクスおじいさんや、他の街にも居る人達にも」
「ほんとうですか?」
「ええ、本当です。二人でお父さんにお願いしましょう?」
「はい!」
顔を見合わせて、くすくすと笑う母子。
「へぇ、どんな風にお願いしてくれるの?」
そんな二人に楽しげな声が掛けられて、母子は弾かれたように振り向いた。
「おとうさん、おかえりなさい!」
「お帰りなさい、ユーリ」
「ただいま、エステル、アルカ」
立ち上がろうとする妻を宥め、駆け寄ってきた息子を抱きとめて頭を撫でた後、背を屈めて女性の頬に唇を寄せたユーリ。そして、改めて二人に尋ねる。
「で、決まった?」
「ユーリは意地悪です」
「そう? どうせお願いされるなら、されて楽しい方がオレも嬉しいし」
「ええと、おとうさんがたのしいほう……。おかあさんのおてつだいとか、ですか?」
「普段からしてくれてるから、アルカはそれでいい。まだ待たせちまうけど、約束な」
「はい! やくそくです!」
楽しげに息子と指きりをしたユーリは、さて、と椅子に掛けたままの妻を見下ろした。
「エステルは?」
「……やっぱり意地悪、です」
む、としながらもゆっくりと立ち上がった彼女は、僅かに踵を上げて青年の頬に唇を寄せる。
「約束、ですよ」
「ん、了解」
楽しそうに笑う父と、頬を淡く染める母。そんな両親を見比べて、近い未来に兄となる予定の少年は、結局父の言う楽しい方とはどういうことを言うのだろうか、と小首を傾げるのだった。
*「52.手紙」のその後のローウェル一家の様子。


