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65.大好き!

【騎士姫パラレル/エステル&リタ/短編】

「はい、これ」
「……はい?」
 急に差し出された何かを反射的に受け取ったエステルは、疑問を浮かべた表情で差し出した少女を見た。
「あの、リタ……これは何です?」
 エステルの両の手のひらに収まる程の大きさの水晶は、半分にされた半円の状態で白銀の台座に固定されている。
「準物質的要素循環式力場発生装置よ」
「え、ええと……準物質……?」
「簡単に言うと、エアルをマナに変換してその力で結界を作り出す装置ね。風属性も付与してるから、防音効果もあるわ」
 ほら、とエステルの手の平の中の水晶に手をかざした少女。若干のエアルを鍵としてその力をマナへ変換、風属性の力として構築されて周囲に「場」を作り出す。
「分かる?」
「はい。隔絶、された気がします」
「光と闇の力の合わせ技ってとこね。この『場』が発生した時点で、外と中が切り離されるのよ。よほどエアルの力を視ることに長けてる奴じゃなきゃ、まず分からないと思ってくれていいわ」
「それはリタでもです?」
「まあ、面倒ではあるわね。特殊な術式を組んでるから、その空間が怪しいと思って調べない限りは、あたしでも見逃すかも」
 小さく肩を竦めて言ったリタは、真剣な顔で続けた。
「あんたの立場じゃ、これからも狙われておかしくないんでしょ? それに……防音も出来るから、これがあれば、これからもあの男の前で『エステル』でいられるんじゃない?」
「リタ……、有難う御座います」
「べ、別にあたしは……。作ってみたかったのもあるし。そのついでよ、ついで」
「ふふ、大好き! ですよ、リタ」
「な、な、何言ってんのよ! そういうことはあの男に言いなさい!」
 頬を赤く染めて言い返したリタの言葉に、エステルも頬を染めて言い返す。
「リタこそ、何言ってるんです。わ、わたしは別に……」
 その時、部屋の扉がノックされ、どこか慌しく開く。ティーセットを乗せたトレイを片手に、空いた手はいつでも得物を抜けるようにしながら入室した黒の聖騎士は、さっと周囲を見回す。
 しかし彼は、ある一点で視線を止め、軽く目を眇めて口を開いた。
「リタ・モルディオ。幾ら殿下の友人とは言え、このような実験は私が居る場でしてもらおうか。三つ数える内に解除せよ」
「……エステルのことについては『騎士』の方がよっぽど性質が悪い気がするんだけど」
 堂々と守るべき立場だからこそ、身分を偽って外を旅していた時よりも。
「そうです?」
「そうよ」
 気づいてないのは守られている本人だけ。
 少女は小さく溜息を漏らしながら、結界装置に手を伸ばして装置を停止させた。
 青年の目には突然表れたように見えるだろうに、動じた様子も無く主の無事を確認し、警戒を僅かに緩める。それを見ていたリタは、守りの意味よりもただの防音装置として使用される頻度の方が高くなりそう、と内心で僅かに嘆息するのだった。

*捏造騎士×姫設定の「22.NO」と「10.生まれる前」の間のお話。魔導器とかマナとかのことに関して色々捏造含んでますのであしからず。