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45.残った物

【ED後/EDロール最後の場面/某銀髪の英雄視点/シリアス/掌編】

 ふと思い出すことがあった。
 どうしようもなく、人の光と影が目に晒されたあの月日を。
 今でもこれで良かったのか、そんな自問を繰り返す男は決まってある場所を訪れる。
 かつて魔導士達が集った街の、その跡に落ちた、傾いだ古代都市の成れの果てを一望出来る台地。そこに存在する、人の立ち寄らない森を抜けた場所にある切り立った崖から眺めるのだ。
 空を、大地を、生きる命を、そして人が生み出した兵器であり新しい時代の始まりを迎えた今は亡き都市を。
 今はもう、結界という守護であり籠であった偽りの空は無く、青い空の向こうに黒き災厄が蠢いていることもない。災厄――いや、哀しきものたちは、今は「精霊」としてこの世界に還り、存在しているのだから。
 男は腕を伝い遊んでいた栗鼠が離れる気配に視線を上げると、しっかりとその光景を目に映した。
 そして、頭上を通り過ぎた影。
 世界でもっとも高い山がある山脈――アステフィルス環状連峰すら悠々と通り過ぎて行く、地上の「凛々の明星」たる者達の乗る船とそれを運ぶ始祖の隷長。
 吹き抜けた風に、かつての協力者であり今はこの世界に風を紡ぐ者となった彼の者の声を聞いた気がして、男は口元を僅かに持ち上げた。
 かつて世界を壊しかけたヒト。そしてそれを忘却し驕ったヒト。己以外の生命に傲慢なヒト。
 だが、だからこそ、その濃い影と共に驚くべき光すら持つのだ、ヒトとは。
 全てが在るからこその「世界」。
 亡き親友が願ったであろう未来が、もしかしたらこの先にあるのかもしれない。
 自問の後に男の胸に確かに残った物――未来への希望。
「今は、この世界を見守るだけだ」
 呟きは風にさらわれ、世界に溶けるように消えた。

*実験場の名目を果たす為に、普段絶対書かないキャラに挑戦してみる。というわけで、EDロールの最後の某場面をイメージして。